
日本の「台湾有事」発言で緊張高まるなか、軍事活動が急拡大
中国が東アジア海域で前例のない規模の軍事展開を進めている。ロイター通信など複数メディアによると、中国人民解放軍および海警局の艦艇が、黄海南部から東シナ海、南シナ海、さらには太平洋へと広がる広域で集結し、その数は一時100隻を突破した。これは中国による海上戦力の誇示として、これまでで最大規模とみられる。
今回の展開は、中国が公式に大規模演習を発表していない状況下で行われており、地域の安全保障環境に大きな不透明感をもたらしている。特に、日本の高市早苗首相が「台湾有事」発言を行い、中国が外交的反発を強めているタイミングと重なる点が注目される。
■ 黄海・東シナ海・南シナ海・太平洋へ広がる戦力展開
ロイターが入手した地域某国の情報報告書によれば、12月4日午前の時点で90隻以上が任務を遂行し、今週初めには100隻を超えていた。これらの艦艇には海軍の主力艦船だけでなく海警船も含まれ、海上での実効支配能力を総合的に示す形になっている。
関係者4人は「展開範囲は黄海南部から東シナ海、南シナ海、太平洋へと広がっている」と証言。中国の艦隊行動が沿岸防御の範囲を超え、広域的な海洋進出をさらに強めていることを示す。
2024年12月の大規模展開を上回ったとされる今回の行動には、台湾も警戒を強めている。2025年11月には、中国初となる電磁カタパルト搭載空母「福建」が海南省三亜で正式就役するなど、艦隊能力強化も進んでいる。
■ 「台湾有事」発言後に展開加速か
複数の関係者は、中国が11月14日に日本の金杉憲治大使を呼び出し、高市首相の「台湾有事」発言に抗議した直後から、通常より多い艦艇展開が始まったと指摘する。
ある官員は「今回の規模は中国の防衛需要を超えており、地域にリスクを生じさせている。中国は周辺国の反応を試している」と述べた。
中国国防部・外交部・国台弁はいずれもコメントしていない。
■ 日本は「急増とは評価せず」も警戒強める
日本の自衛隊は、中国の活動について急増とは評価していないとしつつ、「中国軍は海軍力強化を通じ、より遠方の海空域での作戦能力向上を図っている」との認識を示した。
台湾の安全保障専門家である中華戦略学会の張競氏は、今回の展開を「歳末冬操」と呼ばれる定例演習の一環と分析し、訓練以上に後方補給能力の検証が目的だと指摘した。
■ 実弾射撃や軍事任務の航行警告が連続
中国海事局は以下の通り広範囲の航行警告を発出しており、海域封鎖の様相も呈している。
- 塩城海事局(11月17〜19日):黄海中部で実弾射撃
- 大連海事局(11月23〜12月7日):渤海海峡〜黄海北部で軍事任務
- 大連海事局(11月25日〜28日):黄海北部で実弾射撃
東アジア全域で、軍事活動の密度が急激に高まりつつある。
■ 地政学的緊張は新段階へ
100隻超の艦艇を伴う今回の展開は、軍事演習の域を超え、中国の海洋進出戦略を具体的に示すものとなった。台湾・日本・中国という3つの主要アクターの動きが複雑に絡み、東アジアは2026年に向けて緊張の新局面に入っている。

