
オランダ政府は、中国との協議で進展があったとして、同国に本社を置く半導体メーカー ネクスペリア(Nexperia/安世半導体) を政府管理下に置く措置の適用を停止した。これまで同社と世界約30法人に課されていた、資産・知的財産・人員配置などの凍結措置が解除されたことになる。
ヴィンセント・カレマンス経済相は声明で、中国側が欧州および世界の半導体供給確保に向けて取った措置を「善意の表れ」と評価し、対話を継続する意向を示した。
参考:
DW(ドイチェ・ベレ)報道
ネクスペリアは自動車や家電向けの汎用半導体で世界的シェアをもち、欧州車載産業にとって欠かせない存在である。今回の判断は、欧州の製造業に広がっていた供給不安の緩和につながる。
■ 背景:国家安全と米国の「50%ルール」
9月末、オランダ政府は「国家安全上の懸念」を理由に、ネクスペリアを暫定的に 政府管理下に置く特別措置 を発動した。同時に張学政CEO(聞泰科技創業者)の職務を停止し、全世界の事業調整を禁止した。この措置は1952年制定の「貨物可用性法」の初適用であり、極めて例外的な対応だった。
背景には、米国商務省産業安全局(BIS)が9月29日に発動した 「50%ルール」 がある。
制裁対象企業が50%以上出資する企業も、自動的に同じ輸出規制の対象になる という規定であり、親会社である中国の聞泰科技が支配するネクスペリアも米規制対象に含まれる可能性が高まっていた。
参考:
中央社報道
■ 中国の対抗措置で供給網が分断 欧米自動車産業に影響
オランダの管理措置に対し、中国は10月4日、ネクスペリアの中国工場で生産された特定品目の輸出を禁止した。同社製品の約8割は中国で封止・テストされるため、輸出停止は事実上、全球供給網を遮断する結果となった。
欧米自動車メーカーは深刻なチップ不足に直面し、生産一時停止や遅延が相次いだ。
また中国は半導体製造に不可欠な重レアアースの輸出枠も調整し、供給不安が広がった。
こうした一連の対立は、以下の内部記事でも詳細を扱っている:
■ 管理措置停止は「部分的進展」 しかし支配権問題は残存
今回の行政措置停止は対立緩和に向けた第一歩といえるが、最も核心的な問題である ネクスペリアの支配権 は依然として未解決である。
- オランダの 企業法廷(商事裁判所に相当) は、
聞泰科技が保有する株式99%の第三者托管を継続 - 張学政CEOの職務停止も維持
- 法廷判断は政府の行政措置とは独立しており、今回の停止で自動的に解除されない
中国商務省は停止を歓迎したが、企業法廷の判断が「解決の障害」と位置づけている。
参考:
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■ 供給網は一時安定へ しかし構造的緊張は継続
建設的対話が進んだことで、ネクスペリアの中国工場は供給再開へ向け調整が進み、欧州の自動車産業にとっては安定化の兆しが見えてきた。
一方で、
- 米国の輸出規制網
- 欧州の経済安全保障政策
- 中国のレアアース管理強化
といった構造的緊張は継続し、半導体サプライチェーンのリスクはなお高い。
今回の管理措置停止は、国際供給網の相互依存性を改めて浮き彫りにしたものの、緊張の根源は解消されていない。
[出典]
- https://www.cna.com.tw/news/acn/202511190409.aspx
- https://www.dw.com/zh/%E5%9C%A8%E7%BA%BF%E6%8A%A5%E5%AF%BC/s-9058
- https://www.stheadline.com/realtime-world/3519389/

