日本の高市早苗首相が「台湾有事は日本の存立を脅かす事態になり得る」と述べたことを受け、中国側は対日反発を急速に強め、各分野で制限措置を打ち出している。最も早く影響が表れたのが航空分野だ。四川航空は2026年1〜3月の成都―札幌線の全便を取り消し、春秋航空や九元航空でも広州―大阪など複数路線のキャンセルが確認された。中国国籍の航空会社8社が日本路線で無料変更・払い戻しに応じ、11月初旬の日中往復便は1189便と前週比14.5%減に落ち込んだ。航空各社は「計画上の理由」と説明するが、政治的緊張を背景とした事実上の制限強化といえる。
関連背景として、中国国内では高市首相の発言を「レッドライン越え」と位置付ける論調が広がり、官製メディアも連日強い批判を展開している(➡︎ 人民日報、高市首相発言を異例の全面批判)。外交部も大使召喚を伴う抗議を行い、対日圧力を強めている(➡︎ 中国が激しく反発した経緯)。
地方自治体間の交流停止 姉妹都市にも波及
航空制限と並行して、地域レベルの民間交流にも影響が拡大した。江蘇省徐州市は愛知県半田市への代表団訪問を中止し、18日に予定されていた表敬訪問と農業施設視察を取りやめた。両市は1993年から姉妹都市関係にあり、コロナ禍ではマスク支援を行うなど交流が続いてきたが、中国側が一方的に計画を撤回したかたちとなった。
さらに、日本の民間団体・言論NPOが中国側と共催する「東京―北京フォーラム」も延期となった。中国側は「高市氏発言が交流の雰囲気を損なった」と理由を説明し、22〜24日に予定された第21回会議の開催を見送った。外交・安全保障・経済を多国間で議論する重要な対話枠組みだが、政治的反発を背景に中断されたことで、両国の民間・準公的交流の先行きにも不透明感が広がっている。
旅行・留学・観光の三分野でも対日制限が一斉に強化
中国当局は政府レベルでの制度的措置も立て続けに発表した。大手旅行会社では日本向け旅行商品の販売停止が広がり、外交部は中国公民に「当面は日本への渡航を控えるよう」正式に注意喚起した。教育部は日本での治安悪化を指摘し留学警告を発出。文化・観光部も訪日旅行の回避を通知し、旅行・留学・観光の三分野が同時に対日警戒を行う異例の事態となっている。これらの措置は高市発言「後」に集中的に発表されており、政治的反応が直接的な引き金になったことが明白だ。
中国官製メディアでは、高市首相への個人攻撃を含む強硬論が連日配信され、世論面からも対日圧力を高める姿勢が続いている(➡︎ 官製メディアの批判事例、中国総領事「斬首」発言の波紋)。
映画作品の上映停止も拡大 文化交流も冷え込み
文化・娯楽分野でも、日本作品の扱いが揺れている。アニメ映画『クレヨンしんちゃん』『はたらく細胞』が相次いで上映延期となり、一方で『鬼滅の刃 無限城編』は興行が好調にもかかわらず、「この情勢では大画面上映が最後になる可能性がある」との懸念がSNSで広がっている。文化交流は政治状況の影響を受けやすく、今回の対日制限強化に伴う象徴的な事例といえる。
[出典]
- https://udn.com/news/story/7331/9146117?from=udn-catebreaknews_ch2
- https://www.cna.com.tw/news/acn/202511170338.aspx
- https://www.dw.com/zh/%E4%B8%AD%E6%97%A5%E5%85%B3%E7%B3%BB%E7%B4%A7%E5%BC%A0%E6%AE%83%E5%8F%8A%E7%94%B5%E5%BD%B1-%E8%9C%A1%E7%AC%94%E5%B0%8F%E6%96%B0%E7%AD%89%E6%92%A4%E6%A1%A3/a-74778795

