日本の高市早苗首相が国会で「台湾有事は日本の存亡危機事態になり得る」と述べ、集団的自衛権の行使に言及した。これに対し中国側は即時に反応し、13日、外交部の孫衛東副部長が駐中国日本大使の金杉憲治を召喚した。中国政府は高市の発言を「露骨で挑発的な涉台言論」と位置づけ、台湾問題をめぐる武力介入を示唆したことを強く非難した。
孫衛東は、日本側がこれまでの中国の申し入れにもかかわらず発言を撤回しなかった点を挙げ、「極めて危険であり、中国内政への粗暴な干渉だ」と主張した。さらに、国際法・戦後秩序・一つの中国原則・日中四つの政治文書に深刻に反すると指摘し、「14億中国人民は絶対に受け入れない」と強調した。台湾問題を「中国の核心利益の核心」と断じ、紅線に触れる行為として日本側を厳しく牽制した。
人民日報「鐘声」が異例の激しい論調で警告 “戦後初の武力威嚇”と断定
14日付の人民日報「鐘声」欄は、高市発言をきわめて重大な問題と位置付けた。同論評は、高市が公式の場で台湾有事と日本有事を結びつけたのは「1945年の敗戦以来、初めて」だと強調し、中国への武力威嚇であり、日本が台湾問題に武装介入する意図を示したと非難した。
論評は、高市の過去の靖国神社参拝や南京大虐殺否認、中国脅威論の強調などを列挙し、「軍国主義の亡霊を呼び戻す行為」と批判した。さらに近年の日本の軍備拡張や平和憲法の空洞化を挙げ、「軍事大国化の危険な兆候」と断じた。
人民日報は最後に、「日本が台湾海峡情勢へ武力介入すれば、それは侵略行為であり、中国は必ず迎撃する」と警告し、強い姿勢を示した。
日本側は反論 大阪総領事の侮辱投稿に抗議も
日本経済新聞中文網によれば、金杉大使は中国側の申し入れに対し、「高市発言は従来の政府見解と一致する」と説明し、中国側の批判に反論した。併せて、大阪の中国総領事・薛剣がX(旧ツイッター)で高市発言に対し侮辱的表現を用いた件について「極めて不適切」と強く抗議した。
薛剣は投稿で、高市に対し「突っ込んでくる汚れた頭は、ためらわず叩き落とすしかない」と記述しており、外交上の緊張をさらに高めた。この動きは過去にも類似例があり、「中国官製メディア、高市首相に下品な悪口雑言」(AlertChina)でも指摘されている。
また、「中国総領事の『斬首』示唆発言で日中関係が緊張」(AlertChina)は、今回の事例と同様に外交上の挑発行為が繰り返されていることを示す。
さらに広い国際文脈として、米国の外交姿勢が揺れ動く中、
「トランプ氏、中国を称賛し同盟国を批判」(AlertChina)
といった動きも重なり、東アジアの安全保障環境は不確実性を増している。
高まる地政学リスク 台湾問題を軸に日中対立が再び先鋭化
今回の一連の応酬は、台湾問題をめぐる日中対立が改めて先鋭化したことを示している。中国は台湾統一を国家の最重要課題と位置付け、日本の「台湾有事」発言を領土問題への直接的干渉と見なす。一方、日本側は安全保障環境の悪化を受け、米国との連携を前提に集団的自衛権の行使範囲を再評価している。
外交・軍事・言論の各領域で両国の立場は鋭く対立し、今回の大使召喚とメディア論評は、その緊張を象徴する事象となった。台湾海峡情勢が不安定化するなか、日中関係は新たな局面へ入ったといえる。

