
江西省九江市の鄱陽湖サービスエリア付近で11月9日、風力発電機の大型ブレードが突然破断し落下する事故が発生した。現場は高速道路のサービスエリアに隣接しており、破断時には強風が吹いていた。中国メディアの極目新聞によると、破片やガラス繊維とみられる軽い繊維片が風に乗って周辺へ飛散し、通過車両の乗員が健康への懸念を示した。負傷者は確認されていないものの、破断したブレードは広い範囲に破片を撒き散らしたとされる。
ブレードは発電事業者・吉電控股が運営する風力発電設備の一部で、同社は事故発生後ただちに設備を停止し、調査チームを現地に派遣した。破断したブレードは風力発電所の計画区域内に落下し、周辺の居住区や公共施設には影響が及んでいないという。
ブレードの材質と飛散したガラス繊維への懸念
吉電控股の説明によれば、当該ブレードはエポキシ樹脂を基材とし、ガラス繊維布や炭素繊維布を用いた複合材料で製造されている。風力発電機のブレードは軽量化と強度確保のため複合材が一般的だが、破断時には細かい繊維片が飛散する可能性があり、今回も住民・通行者の不安を招いた。
同社は第三者の環境評価機関を招き、飛散した繊維片が周辺環境に与える影響を調査する方針を示した。また、製造会社および建設会社と連携し、破断のメカニズムや構造上の課題を含めた原因究明に乗り出している。
こうした素材リスクは、国際的にも風力発電設備の課題として議論されており、中国国内でも廃棄ブレードの処理や安全規制の強化が課題となっている。
高速道路当局と地方政府の対応
極目新聞の記者が江西高速道路のカスタマーサービスに問い合わせたところ、風力発電機を管理する事業者がすでに対応を開始していると説明した。また、通行者から寄せられた「ガラス繊維が飛散している」との不安についても、事業者側へ正式に伝えたと明らかにした。
さらに九江市都昌県発展改革委員会は、事故現場を封鎖し立ち入りを禁止した上で原因調査を続けている。周囲に安全柵やバリケードを設置する「囲い込み措置」がとられ、交通・住民への二次被害の防止が図られている。
中国は再生可能エネルギーの導入拡大を国家戦略として位置づけており、風力・太陽光設備の急速な拡張が続いている。吉電控股のような発電企業は、風電プロジェクトの大規模開発を通じて供給力を強化しているが、その一方で設備の老朽化、極端気象時の安全確保、メンテナンス体制の標準化といった課題も顕在化している。
今回の事故は、風力発電設備の安全監督のあり方や、複合材ブレードの耐久性とリスク評価を見直す契機となる可能性がある。中国国内では、AIやIoTを組み合わせた巡回監視の導入、設備寿命の予測精度向上、強風地域でのリスク管理など、政策レベルでの議論も進みつつある。
風力発電設備に関する安全問題は、中国国内にとどまらず国際的な再エネ拡大政策とも密接につながる。たとえば、米中関係ではエネルギー・AI・レアアースをめぐる交渉が続き、環境規制や素材供給の枠組みも国際協調の対象となっている。
再エネ設備の製造と原材料供給は、上記のような国際ルール形成と不可分であり、今回の事故も広い文脈の中で注目される。
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