
米国のドナルド・トランプ大統領が、中国を持ち上げる一方で同盟国を批判する発言を繰り返している。11月10日放送のFOXニュースで「多くの同盟国は友人ではない。彼らは貿易で中国よりも米国を搾取している」と語り、中国の薛剣・駐大阪総領事が日本の高市早苗首相の台湾発言を「斬首」発言で威嚇した件にも「私は中国と良好な関係にある」と答えた。
この発言はラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などが報じたもので、トランプ氏の親中姿勢が改めて浮き彫りとなった。
東京で「最強の同盟」発言から一転
トランプ氏はわずか2週間前の10月28日、東京で高市首相を称賛し「日米は最強の同盟国だ」と述べていた。だが今回の発言はその真逆の内容であり、発言の一貫性を疑問視する声が上がっている。
日本では、薛剣総領事の投稿が外交官としての常軌を逸しているとして、自民党が「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放を求める決議を進めており、日中関係が緊張を増す中での発言だけに波紋が広がった。
フランスにも矛先 「25%関税」発言に事実誤認
トランプ氏は番組内で、中国人留学生60万人の受け入れ政策を正当化。「留学生が半減すれば、アメリカの大学の半分は破産する」と主張した。司会者が「彼らはスパイだ」と指摘すると、「フランス人が良いと言えるのか?」と反論し、「我々はフランスと多くの問題を抱えている。彼らは米国の技術に不当な課税を行い、米国製品に25%の関税を課している」と述べた。
しかし、この発言に事実関係はなく、仏紙フィガロなどは「根拠のない批判」と報じた。トランプ氏の同盟国攻撃は、フランスを含む欧州諸国にも広がっている。
保守派からも批判、「中国寄り外交」懸念
トランプ氏の発言には保守派からも強い反発が起きている。元国家安全保障顧問マイケル・フリン氏は「60万人の中国スパイを呼び込む必要はない」とSNSで非難。MAGA支持層の間でも「アメリカ・ファーストの理念を忘れた」との批判が噴出した。
専門家は、トランプ氏の「中国称賛・同盟国軽視」姿勢が外交の一貫性を欠き、米国の国際的地位を損なう恐れがあると指摘する。トランプ氏はこれまでも釜山での会談後に習近平主席を「偉大な国の偉大な指導者」と称賛したが、実際に米国側が得た成果は乏しかった。
「取引の芸術」か、それとも戦略なき迎合か
トランプ氏の親中的な発言は、自らのビジネス的交渉術「取引の芸術(Art of the Deal)」の延長とみられている。相手を称賛し譲歩を引き出す狙いだが、実際には中国側に主導権を握られ、米国の利益を損なう事例が相次いだ。
同氏の発言は、米中関係の微妙な均衡の中で外交政策の混乱を生み、同盟国との信頼をも揺るがしている。こうした姿勢は2024年の再選後、米国の外交戦略に再び不透明さをもたらす恐れがある。
[出典]
香港01「特朗普:很多美國盟友都不算是『朋友』 貿易上佔便宜比中國多」
RFI「特朗普为何“袒护”中国贬低盟国」
[関連情報]
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