中国四川省アバ州マルカン市の双江口水力発電所貯水区にある「紅旗特大橋」が11日午後に崩落した。右岸側の橋頭部分が山体の変形悪化と地滑りによって崩れ落ち、橋脚と橋桁が断裂。橋の下を流れる大渡河上流の支流・足木足河に落下した。左岸側の橋体のみが残り、現場周辺には一時、濃い土煙が立ちこめた。
地元当局は「崩落は山体滑落が直接の原因で、橋梁の施工品質とは無関係」と説明。人的被害は報告されていない。

事故前日に異常を確認
マルカン市交通運輸局と公安局によると、10日午後3時ごろ、国道317号線(K381+030メートル付近)の紅旗橋右岸で路面と斜面に亀裂が確認された。安全上のリスクが生じたため、当局は直ちに通行を禁止し、臨時の交通管制を実施。翌11日午後4時、山体変形がさらに進行して崩落が発生したが、事前の通行止めにより人的被害は回避された。
成都から壤塘県方面へ向かう車両は、現在も紅原県およびアバ県を経由する迂回路を利用している。
紅旗特大橋は全長758メートルで、主スパン(橋脚間の最長区間)は220メートル、主塔の高さは172メートル。大渡河の上流支流・足木足河をまたぐY字形構造の橋で、マルカン市、金川県、壤塘県の3地域を結び、地域交通網の要となっていた。
2025年1月に中央スパンの合龍工事が完了したばかりで、完成からわずか10カ月の新橋だった。その規模と形状の美しさから「雲中の橋」と呼ばれ、地域発展の象徴として注目されていた。
地滑りによる橋崩落、地質リスクを再認識
紅旗特大橋は双江口水力発電所の貯水区内にあり、周辺は地盤が軟弱で地質が複雑な地域に位置する。専門家は「貯水に伴う地下水圧の変化や斜面の緩みが、山体変形を促進した可能性がある」と指摘。今回の崩落は、中国西部に多い地質リスクの典型例とされる。
当局は専門チームを派遣し、崩落範囲の安全確認や残存構造の撤去計画を進めている。再建の可否については調査結果を踏まえた上で判断する見通しだ。
橋梁事故が続く中国 安全監視体制の課題
中国では近年、橋梁や道路インフラの老朽化・地盤災害による事故が相次いでいる。2025年夏には台風21号によって広西チワン族自治区で地盤災害が多発し、高速道路が陥没(関連記事)。同年には貴州省で土石流による高速道路橋崩落(関連記事)も報告された。
さらに、北京市内では橋梁火災による桁の一部崩落(関連記事)も起きており、構造物の安全監視体制の強化が求められている。
中国政府は「交通強国建設綱要」に基づき、全国の橋梁・トンネルに対する監視センサーやAI診断技術の導入を進めているが、今回の四川の事例は、地質変動に伴うリスクを早期に検知するシステムの不備を浮き彫りにした。
紅旗特大橋は、西部大開発政策の一環として整備された交通プロジェクトの要であり、中国が掲げる「新質生産力」や「デジタルインフラ建設」と並行して進められた。今回の崩落は、インフラの量的拡大に偏った投資モデルに対し、安全性と環境適応性を再評価する必要性を示している。
[出典]
澎湃新聞(中国本土)
聯合報(台湾)
星島頭條(香港)
香港01
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