
米・フィリピン・日本・豪が共同声明 南シナ海情勢に「深刻な懸念」
フィリピン、オーストラリア、日本、米国の4カ国防衛相は11月3日、東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大防衛相会議(ADMMプラス)の期間中に会談し、南シナ海と東シナ海の情勢に深刻な懸念を示す共同声明を発表した。声明は、中国が南シナ海で「安定を損なう行動」を取っていると指摘し、武力や威圧による一方的な現状変更に反対するとした。
さらに4カ国は、2016年の南シナ海仲裁裁定には国際法上の拘束力があると重ねて主張し、中国によるスカボロー礁周辺での行動や接続海域での警備活動を牽制した。こうした動きは最近、豪州哨戒機に対する中国軍機の照明弾発射事件でも顕在化しており、南シナ海で緊張が再び高まっている
→ 内部リンク:「南シナ海でオーストラリア哨戒機に中国軍戦闘機が照明弾発射」
https://www.alertchina.com/post-33295/
中国外交部「虚偽の物語を煽っている」 強い不満と断固反対
これに対し、中国外交部の毛寧報道官は11月6日の定例会見で、4カ国の主張は「虚偽の敷衍(ふえん)を煽り、中国を根拠なく攻撃している」と強く反発した。毛報道官は、南シナ海と東シナ海の情勢は「全体として安定している」と述べ、地域諸国が対話を通じて問題を処理してきた事実を尊重すべきだと主張した。
南シナ海仲裁裁定については、「法の外観をまとった政治的茶番」であり、「違法で無効、拘束力もない」と従来の立場を繰り返した。中国側は2016年当初から裁定を受け入れず、認めない姿勢を現在まで維持している。
毛報道官は「アジア太平洋地域は協力と発展の高地であり、陣営対立のゲーム盤ではない」と述べ、米比日豪の共同歩調は地域の安定を損なうと警告した。
南シナ海緊張の背景 スカボロー礁・台湾海峡・軍事演習の連鎖
今回の共同声明の背景には、南シナ海をめぐる複数の摩擦が連続していることがある。
中国は2024~25年にかけ、スカボロー礁に国家級自然保護区を設置すると発表し、フィリピン側が「実効支配の強化につながる」と強く抗議、緊張が再燃した。
→ 内部リンク:「中国、スカボロー礁に国家級自然保護区を設置」
https://www.alertchina.com/post-32848/
南シナ海の安全保障環境は台湾海峡とも連動しており、カナダやオーストラリアの軍艦が台湾海峡を通過した直後、中国は強く非難した。こうした海域での航行をめぐる応酬が、米比日豪の連携を一層強め、中国側の警戒感を高めている。
→ 内部リンク:「カナダ・オーストラリア軍艦、台湾海峡を通過」
https://www.alertchina.com/post-32769/
中国の反発と米比日豪の包囲網 南シナ海は国際秩序の試金石に
4カ国共同声明は、中国の行動に対抗する多国間の足並みを改めて示すものとなった。米国はフィリピンとの同盟強化を進め、日本と豪州は自由で開かれたインド太平洋構想の下で南シナ海の航行の自由を強調している。中国側はこれを「外部勢力の介入」とみなしており、双方の認識の隔たりは依然大きい。
南シナ海は資源・海上交通路が集中する戦略海域であり、法的解釈や主権主張が交錯する国際政治の焦点となり続けている。今回の共同声明と外交部の反応は、南シナ海情勢が今後も地域安全保障の中核問題であり続けることをあらためて示した。
[出典]
- 中時電子報:https://www.chinatimes.com/realtimenews/20251106004108-260409
- 香港01:https://www.hk01.com/article/60292151
[関連情報](内部リンク)
- 南シナ海でオーストラリア哨戒機に中国軍戦闘機が照明弾発射
https://www.alertchina.com/post-33295/ - 中国、スカボロー礁に国家級自然保護区を設置
https://www.alertchina.com/post-32848/ - カナダ・オーストラリア軍艦、台湾海峡を通過
https://www.alertchina.com/post-32769/

