
福建の就役が最終段階へ 習近平が海南三亜へ到着
中国の三隻目の航空母艦「福建」(舷号18)が三亜で正式就役する可能性が極めて高まっている。11月5日、習近平国家主席の専用機が三亜鳳凰国際空港に到着し、新華社は同氏が海南自由貿易港建設の進捗報告を現地で受けたと伝えた。フライト追跡情報「Flightradar24」および衛星画像からも、習近平が海南入りした事実が確認された。
米衛星画像情報会社BlackSkyが10月25日に撮影した画像では、福建と「山東」が三亜・楡林海軍基地の岸壁に並列停泊し、両艦の甲板には艦載機が配置され、艦首から艦尾まで満艦飾が掲げられていた。軍港周辺では三亜海事局が4〜6日に海域封鎖を実施し、軍事訓練のため航行禁止を通知した。これら一連の動きは、中国海軍が艦艇を就役させる直前に行う定型的手順であり、福建の入列準備が最終段階に入ったことを示す。
福建の技術的特徴:電磁カタパルト搭載で戦力が質的に変化
福建は中国が完全自主設計した初の電磁カタパルト搭載空母(003型)で、2022年に進水した。艦載機運用能力は従来の遼寧・山東を大きく上回り、以下の重量級艦載機を発着艦できる。
- 殲-15T(改良型)
- 新型ステルス戦闘機・殲-35
- 空中早期警戒機KJ-600
電磁式発艦(EMALS)の採用により、発艦効率や艦載機の搭載量が大幅に改善され、解放軍海軍の遠洋航空戦力は質・量ともに拡張する。米海軍フォード級と同等の技術水準に迫り、中国海軍の近代化を象徴する存在となった。
福建は過去一年で複数回の海上試験とシステム校正を実施し、2025年9月には護衛艦とともに台湾海峡を初通過。南シナ海での最終段階訓練に入り、殲-35やKJ-600の発着艦性能が確認されたとみられる。
内部リンク:
楡林基地を拠点とした「三空母体制」へ 戦力投射能力が拡大
福建が正式に就役すれば、既存の山東、さらに北方艦隊の遼寧の三隻体制が整うことになる。特に福建と山東は楡林海軍基地を母港とし、南シナ海の制空・制海能力が格段に強まる。
三空母体制は地域の戦略バランスに以下の影響を与える。
- 台湾海峡への空母打撃群の同時展開が現実的に
- フィリピン・ベトナム周辺での作戦行動の柔軟性が拡大
- 第一列島線の内側・外側での長距離航空作戦が可能に
- 米海軍のプレゼンスに対する圧力が増大
楡林基地は地理的に南シナ海中央に位置し、フィリピン海へのアクセスが良い。中国海軍は福建を軸とした新たな外洋運用ドクトリンに移行しつつあり、遠洋展開力は質的転換を迎えている。
戦略的含意:西太平洋の軍事環境が変わる節目に
福建の就役は単なる新艦艇の配備にとどまらず、中国海軍の戦略的な転換点を意味する。
電磁カタパルトの導入によって、空母打撃群の航空能力が急速に近代化し、遼寧・山東の性能的限界を補完する新世代戦力が加わる。
中国は南シナ海での海洋権益確保、台湾周辺へのプレゼンス拡大、西太平洋での作戦能力強化を同時に進めており、福建の就役はこの三本柱を支える重要なピースとなる。

