中国、日本産水産物の輸入を再開

北海道産ホタテ6トンが約2年ぶりに中国市場へ
中国大陸が2023年8月から続けていた日本産水産物の全面輸入停止を一部解除し、北海道産の冷凍ホタテ6トンが11月5日に中国へ向けて出荷された。日本の鈴木憲和農林水産相が7日の会見で明らかにし、10日には塩蔵ナマコ数百キロの輸出も予定されている。中国の禁輸措置以降、実際の出荷が確認されたのは初めてで、約2年ぶりの再開となる。
背景:2023年8月の全面禁輸で日本の輸出額は激減
中国は2023年8月、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を理由に、日本産水産物の輸入を全面停止した。食品安全法やWTOのSPS協定を根拠に、ホタテ、マグロ、イカなどを含むすべての水産物を禁輸とし、日本の水産業界に甚大な影響を与えた。
日本の対中水産物輸出額は2022年の871億円から2024年には61億円まで落ち込み、ホタテ輸出は完全にゼロとなった。中国は日本最大の水産物輸出先であり、この禁輸は産地の北海道・東北を中心に大きな痛手となった。
禁輸の影響と日本側の対応は、過去に 「中国が日本産水産品の全面禁輸=岸田首相が撤廃要求」(→ https://www.alertchina.com/33122102-2/)としても詳しく報じられている。
条件付きの再開:37地域は解禁、10都県は依然対象外
日中は2024年9月に禁輸緩和で合意し、2025年6月に中国海関総署が「条件付き輸入再開」を発表した。日本の37地域が対象となる一方で、福島、群馬、栃木、茨城、宮城、新潟、長野、埼玉、東京、千葉の10都県の水産物は依然として輸入禁止のまま残された。
輸入には以下が必須とされる。
- 日本政府が発行する衛生証書
- 放射性物質検査の合格証明
- 産地証明
中国側は厳格な検査を継続するとしており、日中双方の制度運用が輸出再開の鍵となる。
このプロセスの延長線上には、日本がWTOで問題提起を検討した動きもあり、
「中国の日本産水産品輸入停止、日本がWTOで問題提起へ」
(→ https://www.alertchina.com/33170009-2/)
とも関連する。
再開を後押しした政治要因:APECでの首脳会談が転機
今回の輸出再開には、10月31日のAPEC首脳会議での習近平国家主席と高市早苗首相の会談が大きく影響した。習氏は会談で、日中関係の改善や戦略的互恵関係の再構築に意欲を示し、処理水を巡る対立の緩和も求めた。
日本側も水産物禁輸撤廃や邦人拘束問題の解決を求めており、その内容は
「水産品禁輸撤廃と日本人釈放求める=日中会談で首相」
(→ https://www.alertchina.com/33901473-2/)
とも一致する。
首脳会談から1週間も経たないうちに、実際の出荷が確認されたことは、政策調整が一気に加速したことを示す。
今後の焦点:禁輸地域の解除と品目拡大
今回のホタテ輸出は再開の象徴だが、依然として10都県の禁輸は続いており、牛肉など一部品目も対象外のままだ。日本政府は中国側との交渉を続け、対象地域と輸入品目のさらなる拡大を目指す。
水産業界では、対中輸出再開が安定するかどうかが最大の焦点であり、処理水の風評や政治的要素が今後も影響する可能性がある。
日中双方の制度運用と外交姿勢が、輸出の本格回復を左右することになる。
[出典]
- 聯合報:https://udn.com/news/story/7331/9123610
- on.cc 東網:https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20251107/bkn-20251107101041432-1107_00822_001.html
- 中央社:https://www.cna.com.tw/news/aopl/202511070039.aspx

