
葬儀中の塀倒壊事故、6人が死亡
9月10日、雲南省昭通市昭陽区守望郷で、親族の葬儀が行われていた最中に高さ3メートルの塀が崩れ、6人が下敷きとなって死亡した。犠牲者には、出稼ぎ先の母親に代わって参列していた25歳の女性・呂珂宇(りょ・かう)さんと、その叔母にあたる呂国琼(りょ・こくけい)さんが含まれた。複数の参列者も負傷しており、地域社会に深い衝撃を与えた。
事故現場では大雨の中、葬儀主が設けた雨よけテントがロープで塀に結びつけられていた。排水が悪く雨水がたまり、重みに耐えられず崩壊したとみられている。目撃者によれば、倒壊の際には塀のそばに3卓の食卓があり、「逃げる間もなく多くの人が下敷きになった」という。孫をかばって亡くなった女性もいたという証言もある。
当局は「天災」と認定、遺族に沈黙を要求
地元政府は事故翌日に複数部門で会合を開き、葬儀主から1人あたり8万元、行政部門から6.6万元を補償金として提示した。条件として「遺体の火葬と事故に関する口外禁止」を求め、これを受け入れたのは6家族のうち5家族のみだった。
しかし、呂珂宇さんの母親・陳さんは「娘を理由もなく葬ることはできない」と拒否。火葬を拒んだ場合は補償を打ち切り、殯儀館の費用も自費負担とするよう圧力を受けた。事故から50日が経過しても警察の鑑定報告や政府の正式調査結果は公表されず、地元公安・郷政府はいずれも「分からない」と回答するのみだった。
50日沈黙の末に報道再燃、社会に広がる不信
10月末、香港や中国本土の複数メディア(華商報・大風新聞、新浪新聞、東網、星島頭條)が相次いで報道。沈黙していた事件が再び注目を集めた。報道は、事故の真相究明が行われていないこと、遺族が補償と引き換えに「沈黙」を強要された構図を明らかにしている。
この問題は単なる地方事故にとどまらず、情報統制と行政の隠蔽体質という中国社会の構造的課題を象徴している。特に、地方政府が「天災」と結論づけて責任を回避する手法は、過去にも多くの災害・事故で繰り返されてきた。(新華社報道分析によると、地方行政の透明性は依然として課題が多いと指摘されている。)
SNSで拡散する遺族の訴え
陳さんの訴えはSNS上で急速に拡散し、多くのネットユーザーが「真相を明らかにすべきだ」と共感を寄せている。中国では、地方政府による情報封鎖や事故処理の不透明さに対する不満が根強く、今回の昭通事故はその象徴となった。
同様の事故は各地で発生しており、たとえば広西での葬儀中の塀倒壊事故や、四川・巴中での葬儀宴席中の食中毒事件、山西での婚礼行列事故など、公共安全と行政対応をめぐる課題は繰り返されている。
行政の説明責任が問われる
今回の事故では、事故原因の調査結果が明らかにされないまま「天災」として処理が進み、遺族が沈黙を強いられた。行政の責任回避が疑われる一方、地方政府に対する監視や報道の自由が限定されている現実も浮き彫りになった。
中国では、こうした「地方の小さな事故」が社会的な怒りの導火線となり、中央政府の統治能力への信頼にも影響を与えかねない。昭通の事故は、単なる悲劇ではなく、透明性と説明責任を欠く行政構造への警鐘といえる。
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