深セン・大鵬半島公園で80日間に3人遭難死 人気登山地に警告板 229件の救助が示す危険性

警告板が示す「3つの共通点」 80日で3人死亡の衝撃

深セン市の南東部に位置する大鵬半島国家地質自然公園で、わずか80日間に3人の登山者が死亡するという異例の事態が起きた。
園内の人気撮影地「望郎帰(ワンラングイ)」付近には、遭難死亡者の事例を記した**「死亡警告板」**が設置され、登山者に注意を促している。

警告板には、8月以降に発生した3件の死亡事例が掲載され、いずれにも「単独行動」「未開放区域への進入」「登山アプリ未使用」という3つの共通点があると明示されている。
公園管理側は「市政公園ではなく、山が高く森林が密集した自然保護地であり、携帯電話の電波も届かず救助設備もない」と説明する。

出典:鳳凰網(凤凰网)香港01


犠牲者の経緯:未開放エリアで相次いだ単独遭難

最初の犠牲者は貴州省出身の27歳男性。8月10日に「望郎帰」ルートを登山し、山頂から恋人に写真を送ったのを最後に消息を絶った。約2か月後の10月18日、遺体が発見された。
2人目は台湾出身の58歳男性で、9月6日に七娘山を単独登山中に失踪。未開放の裏山エリアで遺体が見つかった。
3人目は32歳男性で、10月16日に「望郎帰」を登山中に行方不明となり、21日に第三展望台付近で遺体が発見された。

捜索には延べ1500人以上が動員され、救助犬やドローンも投入されたが、いずれの命も救えなかった。
管理側は「3件とも同様の行動パターンが悲劇を招いた」として、単独登山や未開放区域への立ち入りを強く禁じている。


「風光明媚の裏に潜む危険」 地質公園の構造的リスク

大鵬半島国家地質自然公園は、面積46.07平方キロメートルを誇る深セン最大の自然公園であり、約1億4500万年前の古火山地形を主体とする地質保護区でもある。
園内には標高869.7メートルの**七娘山(チーニャン山)**をはじめ、標高434メートルの「望郎帰」山峰などが点在する。いずれも風光明媚な海蝕地形を持つが、急峻な断崖と落石、通信圏外のエリアが多く、事故時の救助は極めて困難だ。

管理当局は「見た目の美しさに惑わされ、危険を軽視する登山者が後を絶たない」と指摘する。
また、SNSでの“打卡(映えスポット巡り)”文化が事故増加の一因となっているとも分析されている。


229件の救助実績と中国の登山安全管理の課題

公園管理事務所によると、2023年以降、同園では229件の救助活動が行われた。
多くの登山者が疲労や脱水、迷子、夜間行動不能などで救助を求めており、大半は無事救出されたが、単独で未開放区域に入る行為は極めて危険だという。

中国各地では近年、山岳・自然公園での事故が増加傾向にある。青海省老虎溝では標高4000メートル超の雪山で登山者が遭難し、137人が救助、1人が死亡した(AlertChina: 青海・老虎溝遭難事故)。
また、チベット自治区では天候警報を無視した登山で2人が死亡(AlertChina: チベット雪山事故)、新疆ウイグル自治区では砂漠走行中の3人が死亡している(AlertChina: 新疆砂漠ドライブ事故)。

これらの事例は、登山ブームとSNSによる“自己表現型アウトドア”が、安全意識を後退させている現実を浮き彫りにしている。


公園側の呼びかけ:「開放ルートを守り、無謀な挑戦を避けよ」

管理事務所は公式声明で次のように呼びかけている。

「必ず開放された登山ルートのみを利用し、未開放区域に立ち入らないこと。必ず仲間と行動し、十分な飲料水・食料・照明を持参すること。携帯電話の電池を確保し、単独行動は避けてほしい。」

この声明は、単なる注意喚起にとどまらず、**自然観光地における「安全と景観の両立」**という中国の観光政策上の課題を象徴している。
国務院は近年、自然保護区における観光管理を強化する方針を打ち出しており、登山ルートの統一管理や救援体制の標準化を進めている(参考:新華社通信中国経済日報)。


今後の焦点:観光開発と安全対策の両立へ

大鵬半島公園の連続事故は、都市近郊の自然公園における安全管理の欠落を浮き彫りにした。
SNSによる“人気化”が登山人口を急増させる一方で、装備や知識を欠いた登山者が増えている。
自然保護区をどう開放し、どのように安全教育を進めるか——中国全土の観光政策においても重要な課題となりつつある。


[出典]
鳳凰網(凤凰网)香港01

[関連情報]
青海・老虎溝登山事故チベット雪山遭難新疆砂漠ドライブ事故

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