
米中首脳が釜山で再会 経済覇権争いの最前線
アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席は10月30日、韓国・釜山で6年ぶりに会談した。米中両国が経済・技術・安全保障の三正面で火花を散らすなか、今回の会談は世界的な注目を集めた。
トランプ氏は習主席を偉大な国の偉大な指導者と称賛し、関係修復への意欲を示した。一方で、背後には関税政策、レアアース輸出規制、そしてAI(人工知能)技術をめぐる覇権争いという重層的な対立構造が存在する。
関税とレアアース 双方の報復が世界経済を揺らす
トランプ政権が復帰後、中国製品への高関税を再導入し、中国側も報復として希土類(レアアース)の輸出を制限した。レアアースはEVや半導体、軍需機器などの核心素材であり、その供給制限は世界の産業連鎖に深刻な影響を及ぼす。
米中両国は自国経済を守るために対抗措置を取りながらも、互いの市場依存を断ち切れず、今回の会談は破局回避の意味合いを持つ。
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AI技術と経済安全保障 次の主戦場へ
AP通信などによると、表面的には友好的な会談であったものの、背景ではAI技術の覇権をめぐる争いが続いている。生成AIや自動運転、軍事応用などの分野で主導権を握ることは、国家安全保障と産業支配の両面に直結する。
トランプ氏は台湾の安全保障問題は議題としないと述べ、軍事よりも経済・技術分野に焦点を当てた。米中双方ともAI関連企業や半導体技術の優位確保を戦略目標に掲げている。
参考:トランプ氏と習近平氏19日電話会談へ TikTokの米事業存続と関税・半導体が交渉の焦点に
専門家の見方:大きな取引なし 休戦確認が主目的
NBCニュースによれば、トランプ氏は対中強硬派とは異なり、習氏を優れた経営者型リーダーと見なしているという。国際危機グループのアリ・ウェイン氏は、今回の会談は突破口というより、クアラルンプールでの貿易休戦の再確認にすぎないと分析した。
また、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のエミリー・キルクリース氏は、過剰生産や不公正な貿易慣行、知的財産権問題など構造的対立は解決されていないと指摘する。
両国はフェンタニル原料規制など限定的な分野で協力姿勢も示し、中国がフェンタニル原料の規制強化に同意はその一例となる。
首脳往来を模索 米中関係の再構築フェーズへ
ウォール・ストリート・ジャーナルは、今回の会談を一時的停戦と位置づけた上で、今後1年間の首脳主導外交が計画されていると報じた。トランプ氏が来年初めに北京を訪問し、習氏が訪米する案も検討されている。
トランプ氏にとって、貿易戦争から協調への転換は、2026年の国際経済再安定に向けた布石である。両国がAIと経済安全保障を軸に新たな協力形態を模索できるかが、世界経済の方向性を左右する。
[出典]
聯合報:川習會登場 川普盛讚習近平為「偉大國家的偉大領導人」
聯合報:美專家:川普視習近平為競爭企業負責人 釜山川習會難有「大交易」
中央通信社:川習會登場 美中貿易戰發展受關注
[関連情報]
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