
理想MEGAが上海で突然出火 電動ドア開かず乗員が脱出
10月23日夜、上海市閔行区で理想汽車の大型電動ミニバン「MEGA」が走行中に突然出火した。車体下部から火花が散り、10秒で炎が全車に広がった。乗員2人は副運転席側のドアから脱出し、けがはなかった。消防が駆け付け鎮火したが、車は骨組みのみとなった。
車主は「衝突も改造もなかった」と弁護士を通じて声明を発表し、ネット上の「電池損傷」や「補助バッテリー改造」といった噂を否定した。理想汽車は消防当局と合同で原因を調査中である。
【出典:新浪財経】
高性能電池「麒麟5C」搭載 急速充電と熱管理が焦点に
理想MEGAには、寧徳時代(CATL)と共同開発した三元系リチウム電池「麒麟5C」が搭載されている。12分の充電で500キロ走行、航続距離710キロを実現するが、熱暴走時の火勢が強く制御が難しいとの指摘もある。
同済大学の朱西産教授は「地上の異物が底部を擦った可能性がある」と分析。別の研究者は「内部セルの欠陥や設計不良の可能性が高い」と述べた。
理想汽車はクラウド監視体制を整え、AIがミリ秒単位で制御点を監視し、異常を検知すると即座に警告を出す仕組みを導入している。
一方で一部専門家は「5C超急速充電が電池の健康度を損ね、発火リスクを高める可能性がある」と指摘する。
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ポルシェ「タイカン」も走行中に炎上 衝突なしで全焼
24日夜には陝西省西安市でポルシェの電動車「タイカン(Taycan)」が突然発火した。衝突の形跡はなく、車体中央部から炎が上がり、黒煙が空を覆った。消防が出火を制圧したが、車は全焼。メーカーは「外的衝撃はなかった」とし、消防当局と原因を分析している。
【出典:東網 on.cc】
NEV火災が頻発 新国家標準は「出火5分前警報」を義務化
中国国家消防救援局によると、電動車の火災発生率は万台あたり2.88件で燃油車の2件とほぼ同水準だが、火勢の強さははるかに高い。
政府は2026年7月に施行する新国家標準で、乗員に危険が及ぶ5分前の警報を義務化し、電池の「発火・爆発防止」要件を強化する方針を示している。ただし、既販車には直ちに適用されず、現場では旧設計の車両で突発的な火災が続く。
熱暴走が突発的かつ急速に進行するケースもあり、電池の状態を監視・制御するシステム(BMS=バッテリー管理システム)による事前検知や警報が必ずしも間に合わないこともある。BMSは電圧・温度・電流を常時監視して安全制御を担うが、熱暴走はわずか数秒で広がることがあり、現行技術では予測が難しいとされる。
【出典:中央通信社】
NEV火災は年1700件超 品質と設計の両立が課題
2018年から2024年11月までに報告された新エネルギー車(NEV)の火災は1730件を超え、リコールは305回、対象車は462万台に達した。このうちバッテリー火災リスク関連は65回、約44万台に及ぶ。
朱西産教授は「火災発生率は千分の4~5で国際的には一般的な水準。米国でも年間約8000件ある」と述べた。
全国自動車標準化技術委員会の劉桂彬氏は「セル単体の欠陥除去と製造品質の向上が防火の基本」と強調。「遮熱・放熱・耐衝撃を備えた電池パック設計を徹底することが不可欠だ」と述べ、品質と設計の両面からの安全対策を促した。
【出典:聯合新聞網】
拡大する市場と安全課題 信頼回復へ総合対策急務
中国の新エネルギー車市場は世界最大規模に達し、電動化競争が激化している。しかし火災事故の頻発で安全性への不信が高まりつつある。専門家は「性能競争だけでなく、安全基準の実装と生産管理の徹底が急務」と指摘する。
理想汽車のほか、小米の「SU7」やシャオミEVでも死亡事故が発生し、電子ロックが開かず脱出できなかった事例も報告されている(小米SU7炎上事故、シャオミEV衝突炎上)。
政府は今後、製造・設計・運用・リコールにわたる全過程安全監査の強化を進め、事故の未然防止と信頼回復を産業政策の柱に据える方針を明確にしている。

