米中貿易戦争の危機回避へ：クアラルンプール交渉が「枠組み」合意、100%関税回避とレアアース規制延期、大豆購入再開へ

米中貿易交渉、関税戦争回避へ枠組み設定：レアアースと大豆が打開の鍵

米国と中国は、2025年10月25日から26日にかけてマレーシアのクアラルンプールで実施した第5回閣僚級貿易交渉において、長引く貿易摩擦を終息させるための暫定的な共通認識に達した。米国のスコット・ベッセント財務長官は26日の複数のテレビ番組で、今回の交渉が30日に予定されるトランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談（習・トランプ会談）に向けた**「非常に積極的な枠組み」**を設定したと明らかにした。

この枠組みの最大の成果は、米国が中国製品に対する100％の追加関税賦課の脅威を回避することに合意した点にある。トランプ大統領は、中国がレアアースの輸出規制を強化した場合、11月1日からこの関税を課すとしていたが、ベッセント長官は「その状況を回避したと確信している」と述べた。

これに対し、中国側は戦略的な譲歩として、レアアースの全面的な輸出規制の施行を1年間延期し、この政策を再検討する。中国側の貿易代表である李成鋼氏は、北京とワシントンが貿易紛争の解決に向けた「初歩的な共通認識」に達したことを保証した。既存の関税については、双方が1四半期実施後に再議論することに合意している。

農業部門の救済とTikTokの行方：政治的な成果を強調

交渉では、米国の農業部門の懸念にも対応がなされた。中国は、今年と来年にかけて、米国産大豆をはじめとする農産物の大量購入を再開することで合意した。ベッセント長官は、自身が大豆業者でもあることに触れ、中国が政治的な理由で大豆の購入を停止し、価格下落で苦しんでいた米国の農家に対し、「今後数年間も喜んでもらえるだろう」と強調した。これは、トランプ政権の主要な支持層である農業コミュニティに対する大きな政治的成果と位置づけられる。

また、懸案となっていた動画投稿アプリ「TikTok」の所有権問題についても、所有権を米国が管理する形への譲渡取引の細部が既に確定した。ベッセント長官は、中国政府がこの移転に同意したことを確認し、首脳会談の場で正式に合意が完了・発表される予定であると述べた。この合意により、長期間にわたり不透明だったハイテク分野の摩擦の一つが解消に向かう。

レアアース供給網の安定と次なる焦点フェンタニル

今回の交渉の核心的なテーマの一つは、レアアース供給網の安定化である。中国は世界のレアアース供給の大部分を占めており、その輸出規制は、米国のハイテク産業や防衛産業に壊滅的な打撃を与える可能性があった。中国のレアアース輸出規制で世界供給網に衝撃欧州・米国・日本が脱中国依存を加速（AlertChina Post-33320）。規制の延期は、一時的に世界的なサプライチェーンの緊張緩和につながる。ただし、中国、レアアース輸出管理を全面強化米国の半導体規制に対抗し国家安全を名目に主導権確立へ（AlertChina Post-33273）という動きも見られ、中国が長期的な主導権を確保する戦略に変更はないと分析される。

次なる焦点として、首脳会談では貿易のバランス是正のほか、米国で深刻な社会問題となっているフェンタニルの原料供給問題も議題となる。中国は、この合成オピオイドの原料対処に協力することに同意しており、これは米国の国民の安全保障上の懸念に対応する重要な一歩となる。

さらに、ベッセント長官は、トランプ大統領がアジアや中東で実績を上げている**「世界平和計画」**についても、習近平国家主席と話し合う意向があると付け加えた。トランプ氏「習近平は台湾を侵攻しない」発言来年初に訪中へ米中首脳会談で台湾・貿易協議が焦点（AlertChina Post-33310）という背景もあり、両国関係の安定化に向けた多角的なアプローチが図られる見通しである。今回の交渉合意は、米中の「デカップリング（分断）」が深刻化する中で、関係修復に向けた実質的な進展として、国際市場から注目されている。

［出典］中央社：米財長：米中交渉は枠組み合意関税稀土大豆待川習定案 (cna.com.tw) RFI：米国財務長官：中国とレアアースと大豆について合意 (rfi.fr) 香港01：ベッセント：米国は100%関税を放棄中国は稀土規制を1年延期し米国産大豆を購入 (hk01.com) DW：米国財務長官、中国とレアアースと大豆について合意へ (dw.com)