
大風警報を無視した運行、17人乗りの観光車が海に転落
中国江蘇省啓東市で10月18日午前10時頃、海岸沿いの観光地「黄金海灘景区」の観光ミニ列車が、強い風の衝撃を受け海に転落する重大事故が発生した。この事故により計4人が死亡し、公式に事故が認められたのは発生から1週間後の26日であった。
事故に遭ったのは連結式の自動車である観光ミニ列車で、当時17名の観光客が乗車していた。死亡した4人の内訳は、上海からの観光客が3人、南京からの観光客が1人である。目撃者の証言から、事故当日は、強い風により波が堤防に激しく打ち上がってくる悪天候下での運行であったことが確認されている。
地元当局の発表によれば、この事故の原因は、運営会社である江蘇黄金海灘旅遊文化有限公司の明確な法令違反にある。現地では事故前日の17日に大風黄色警報が発令されており、沿岸地域の観光施設には当局からの運休指示が出されていた。しかし、同社はこの指示に違反し、無許可で観光車を啓東円陀角旅遊度假区の堤防に乗り入れさせた結果、悲劇を招いた。違法運行を指示した関連責任者は、既に事故当日の18日に警察に身柄を拘束されている(新華日報の報道)。
事故後の情報隠蔽と当局の対応に透ける問題点
今回の事故で特に問題視されているのは、事故後の情報公開の対応だ。甚大な被害が出たにもかかわらず、運営会社の「黄金海灘景区」は事故直後の18日午後に理由を明かさずに閉園通知を出したのみで、事実を公表しなかった。さらに、メディアの取材に対し、啓東円陀角旅遊度假区管理弁公室や市の関連部門が当初「認知を否定」、つまり事故発生の事実を知らないと回答するなど、情報が約1週間にわたり公表されないという異例の事態となった。
死亡者が発生した重大事故の情報が、公的機関によって迅速かつ正確に伝えられないことは、地域住民や観光客の安全に対する信頼を大きく損なう行為である。過去にも中国では、観光施設における安全管理の不徹底や、事故後の情報隠蔽が問題となったケースがある。例えば、浙江省では観光地で遊覧車が横転し死傷者を出す事故が発生しており、広東省でも川下りツアーでの死亡事故が起きている。今回の観光ミニ列車 転落 4人死亡 啓東の事故も、こうした観光分野における構造的な安全軽視の姿勢の表れと言える。
企業の安全管理体制と法令遵守の徹底が急務
当局は現在、法に基づき責任追及を進めるとともに、事後処理作業はほぼ完了したとしている。また、今後は「今回の教訓を深く受け止め、法令に基づき企業の安全生産教育と管理を強化し、再発防止を徹底する」との方針を表明した(中央通信社の報道)。
この事故の背景には、大風という予測可能なリスクに対する企業側の安全意識の欠如、そして運休指示という法令遵守の軽視が深く関与している。観光客を乗せて運行する交通手段は、特に安全基準が厳しく求められる。今回のミニ列車が連結式の自動車であったことを踏まえれば、風速や波の高さといった運行限界の明確化、悪天候時の運行停止基準の厳格な運用が不可欠であった。
今後、当局が責任追及を徹底し、同様の事故を防ぐための実効性のある安全対策、特に悪天候時の運行に関する具体的な指導を強化できるかが焦点となる。公衆の安全に対する政府の透明性と対応力が試されている(星島頭條の報道)。なお、レジャー施設における重大事故は、吊橋ワイヤー切断による事故など、中国国内で繰り返し発生している事案である(東網の報道)。

