
トランプ氏、台湾侵攻の可能性を否定
米国のドナルド・トランプ大統領は10月20日、ホワイトハウスでオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相と会談した際、中国の習近平国家主席について「台湾を侵攻する意図はない」と述べた。台湾は「習主席にとって目の中のリンゴのような存在だが、行動には移さない」とも語った。
トランプ氏は「米国は世界最強の軍事力を持つ国であり、誰も軽々しく挑発しない」と強調。台湾防衛をめぐる軍事介入の是非には明言を避けつつも、「台湾を含む多くの問題で建設的に協議できる」と述べた。
APEC首脳会議で「トランプ・習会談」実現へ
トランプ氏は今月末、韓国・慶州で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席し、習近平主席との会談を予定している。最優先課題は「公正な貿易協定」の締結であり、米中経済対話の再開を図る方針を示した。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国側は貿易協議の中で、米国に「台湾独立を支持しない」と明確に表明させたい考えを持つ。トランプ政権は対中関税を維持しつつ、軍事衝突を避け、経済交渉を軸にした「実利外交」を重視している。
中国「台湾は中国の一部」 内政問題を強調
トランプ氏の発言を受け、中国外交部の郭嘉昆報道官は21日の定例会見で「台湾は中国領土の不可分の一部であり、台湾問題は純粋に中国の内政問題だ」と述べた。さらに「最大限の誠意と努力で平和統一を追求するが、いかなる勢力も台湾を中国から分裂させることは許さない」と強調した。
トランプ氏が「2026年初めに訪中する」と述べたことについては、「現時点で提供できる情報はない」とした。
台湾政府「米中会談を注視」 米台の連携を強調
台湾の卓栄泰行政院長(首相に相当)は21日の立法院で、「トランプ・習会談は台湾の利益に影響を及ぼす可能性がある」としたうえで、「米台はAI分野などで世界をリードしており、協力関係を維持している」と述べた。
洪孟楷立法委員(議員)は「台湾問題が米中間の取引材料となる懸念がある」と指摘。これに対し政府側は「米台および世界の共通利益の観点から議論が進むと信じている」と応じた。台湾外交部の王良玉北米司長も「台米の意思疎通は緊密であり、台湾の利益を守る」と述べた。
米豪、鉱物協定で対中依存脱却へ
トランプ氏とアルバニージー首相は同日、85億ドル規模の「重要鉱物協定」に署名した。米豪両国はレアアース供給網を再構築し、中国依存を減らす方針で一致した。トランプ氏は「今後1年以内にレアアース供給は飛躍的に増加し、供給不足は解消される」と述べ、経済安全保障を米中関係再構築の柱とする考えを示した。
分析:台湾問題を軸にした“取引外交”の再始動
トランプ政権の対中姿勢は、従来の対立構造をやわらげ、経済・安全保障の両面で「交渉型リアリズム」に転じつつある。台湾問題を含む敏感なテーマを再び交渉のテーブルに戻すことで、米中関係を「衝突」から「取引」へと移行させる狙いがある。
習近平政権は「一つの中国」原則を維持しながら、軍事圧力と経済影響力を組み合わせた「段階的統一」を模索。台湾側は米国との連携を基盤に、主権と国際的地位の維持を図る構えだ。
出典(External links)
- ドイチェ・ヴェレ中文網「特朗普称习近平不会侵台 预计明年访中」
- フランス国際放送(RFI)「特朗普:中国‘不想’入侵台湾 重申对习近平的信任」
- 聯合報(udn)「川普月底會習近平 將談台灣…稱台是中國『眼中的蘋果』」
- 中央通信社(CNA)「川普指中無意犯台 中:解決台灣問題是中國人的事」