英国が中国企業11社を制裁 ロシア支援関与で外交摩擦激化 中国は「国際法違反」と強く反発

英国政府は10月15日、ロシアのエネルギー企業を支援し、軍需産業に重要物資を供給した関与を理由に、中国(香港を含む)の企業11社を制裁対象に指定した。対象には石油関連施設4カ所と天然ガス受入基地1カ所が含まれる。中国政府はこれに対して強い反発を示し、駐英大使館と外交部の双方を通じて抗議し、制裁撤回を要求した。

制裁リスト全体は90項目に及び、エネルギーおよび軍需関連の34社と5人の個人、さらにロシア産石油製品の輸送に関与する船舶51隻が含まれている。中国企業では、ロシアの「北極液化天然ガス2号(Arctic LNG 2)」プロジェクトから天然ガスを輸入する国家管網集団北海液化天然ガス有限公司のほか、山東省の石油・港湾事業者などが名を連ねる。


中国「国際法の根拠を欠く一方的行為」と強く非難

中国駐英大使館は声明を発表し、英国の措置を「国際法上の根拠を欠く一方的行為」と非難した。報道官は「英国側は中国企業の正当な権益を損なう」と指摘し、既に英政府に対して厳正な抗議を行ったと明らかにした。

声明はまた、「中国はウクライナ危機に際し、客観的かつ公正な立場を維持し、和平交渉を促進してきた」と述べた上で、「軍民両用物資の輸出も法令に基づき厳格に管理している」と説明。中ロ企業間の正常な協力関係に対する干渉を拒否する立場を示した。


外交部、英国を政治的操作と非難

中国外交部の林剣報道官は16日の定例記者会見で「中国は国連安全保障理事会の承認を経ない一方的制裁に一貫して反対する」と述べた。林氏は、英国側が「中国国家主体が英国政府の機密システムに侵入した」と主張した点を取り上げ、「全くの捏造であり、根拠のない中傷だ」と断じたうえで、英国に政治的操作をやめるよう要求した。

中国側は、今回の制裁が国際経済秩序に悪影響を及ぼし、エネルギー市場やサプライチェーンの安定を損なう可能性を指摘。声明には「中国の利益を損なういかなる行為にも断固として反撃する」と明記され、外交・経済の両面で対抗措置をとる方針が示された。


緊張拡大:英中関係の亀裂と更なる摩擦

今回の制裁発表をめぐり、英中両国の関係は一層緊迫化する見通しだ。英国では中国のサイバー攻撃疑惑やスパイ事件が続いており、香港情報機関に協力したとして起訴された3人や、スパイ容疑で起訴されていた英国人男性の自宅近死亡事件などが発生している(香港のスパイ容疑で起訴の英国人男性、自宅近くで死亡英国当局、香港情報機関に協力の3人起訴英、中国スパイの英国人男性2人起訴 独も3人拘束)。

さらに、北京が英大使館の給水を停止か との報道もあり、外交施設を巡る実力的なプレッシャーも懸念される。こうした動きは、制裁問題だけでは済まされない包括的な対立構図の一端を示す。

中国側は、英国の政治的な動きが中英関係を破壊していると非難し、技術・貿易・投資分野での対抗措置も念頭に置いていると見られる。英国の制裁はロシアへの圧力を目的とするが、結局は英中外交摩擦を深め、欧州の対中政策にも影響を及ぼす可能性がある。


エネルギー・貿易への波及と戦略的焦点

制裁対象企業には、ロシア産原油や天然ガスの輸送・精製を担う企業が多く含まれ、国際的なエネルギー取引に波及効果を引き起こす見込みだ。特に Arctic LNG 2 プロジェクトは欧州向けの供給網再編に関係しており、この事業への影響はロシア制裁の実効性を左右する要素となる。

専門家の間では、英国の単独制裁が他の西側諸国に追随を促すかどうかが焦点とされる一方、中国側の報復措置が企業や物流に悪影響を及ぼすリスクも指摘されている。中ロ貿易額は2024年におよそ2,400億ドルを超え、エネルギーやハイテク製品を軸に関係が深化している。今回の制裁は、こうした構造的な協力関係に試練を突きつける可能性が高い。

今回の動きを通じて、英中関係は単なる外交摩擦を超えて、国際エネルギー戦略と地政学的な力学に絡む対立局面へと拡大しつつある。


外部リンク(External Links)

on.cc東網:英以涉俄理由制裁11中國實體 華提嚴正交涉
星島頭條:英國制裁11家中國實體 中使館:將堅決回擊
中央通信社:英國制裁11家中國實體 中使館:將堅決回擊
Reuters:UK issues sanctions on China entities over Russia links


内部リンク(Internal Links)

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英国当局、香港情報機関に協力の3人起訴
英、中国スパイの英国人男性2人起訴 独も3人拘束
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