
1. 第20期四中全会の意義と想定議題
中国共産党の中央委員会全体会議(全会)は、政策路線や重要課題を決める最高意思決定の場だ。**四中全会(第4回全体会議)**は通常、各期の中盤以降に開かれ、制度改革や長期計画の調整を担う。
過去の四中全会では、法治・統治体制の再設計や行政監督強化が主題となったことも多い。
2025年10月に予定される**第20期第4回全体会議(四中全会)**では、以下の議題が軸となる見通しだ。
- 中共中央政治局による業務報告
- **「第15次五年計画(2026〜2030年)」**に関する討議
- 経済情勢の分析・政策運営方針の決定
(出典:[中国政府网](https://www.gov.cn/)/[人民網](http://j.people.com.cn/)/新華網)
本会議は、経済政策・構造改革の方向性を定める「政策ブリッジ(橋渡し)」の役割を持つ。
2024年7月の三中全会で掲げた「改革深化・中国式現代化」の具体化が焦点となる。
関連:
- 中国共産党第20期四中全会、10月20日開幕へ 焦点は次の五カ年計画と指導部の人事(AlertChina)
2. 中国経済の現状と課題(2025年時点)
2025年上半期の実質GDP成長率は**+5.3%**と公表され、目標「5%前後」をかろうじて維持した。
しかし4〜6月期は+5.2%で、前期(+5.4%)から鈍化。
統計上の数字に比べ、実体経済の回復は脆弱との見方が広がる。
外需は為替要因で下支えされているが、内需・消費の回復遅れが目立つ。
2025年1〜8月の固定資産投資は前年同期比+0.5%と停滞、不動産開発投資はマイナスに転じた。
国家統計局の発表によると、2025年8月の全国社会消費品小売総額は前年同月比+3.4%、1〜8月累計では+4.6%**となった。
一見プラス成長を維持しているが、都市部の冷え込みが顕著である。
北京では8月単月が**−11.4%、累計でも−5.1%**と大幅減。
上海も累計+3.7%にとどまり、全国平均を下回った。
大都市における消費者心理の冷え込みの背景には、雇用不安や住宅価格の下落による資産効果の剥落があるとみられる。
「数字は持ちこたえているが、実感は冷え込む」
台湾紙《経済日報》や《自由時報》は、「数字は持ちこたえているが、実感は冷え込む」として、統計上の成長率と生活実感の乖離を次の4要因に整理している。
① 地域分散構造:内陸・中西部の成長が平均値を押し上げる一方、一線都市(北京・上海)の消費は低迷。
② 不動産と家計負債:住宅価格の下落で資産効果が剥落し、家計の消費マインドが冷却。
③ 統制強化の副作用:規制・監督強化は中長期安定に資するが、短期的には投資・雇用を抑制。
④ 外部リスク:サプライチェーン再編や輸出不確実性の高まりで企業が守りの姿勢に転じている。
(出典:《経済日報》《自由時報》2025年10月報道)
不動産市場と地方財政の重圧
住宅価格下落が続き、建設業・関連消費を直撃。
地方財政の悪化も加わり、景気刺激策の余地は縮小している。
地方政府債務の累積が財政再建を阻み、「政策余力の限界」*が課題として浮上している。
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3. 四中全会の焦点と政策見通し
第15次五年計画(2026〜2030年)の骨子
台湾・香港メディアは、四中全会で以下の政策方向が議論されると伝えている。
- 成長率目標の4.5〜5.0%レンジ化による現実的目標設定
- 内需刺激・家計支援:消費減税、クーポン、所得補填、地方インフラ更新
- 技術・新インフラ重視:EV、半導体、再エネ電力網への重点配分
- 統制・ガバナンス強化:市場秩序の整備、金融リスク管理
- 外需確保:供給網安定化、サービス貿易拡充
- エネルギー転換:非化石エネルギー比率引き上げによる脱炭素化
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改革と統制のバランス
三中全会で提示された「改革深化」と「統制強化」は、依然として緊張関係にある。
四中全会では、
「どこまで自由化を進め、どこから統制を強めるか」
が最大の政策テーマとなる可能性が高い。
(出典:新華網/経済日報)
4. 展望と国際的影響
四中全会後に示される方針は、2026年以降の中国経済運営の指針となる。
改革重視型なら産業転換が加速する一方、安定重視型では統制強化が優先される。
折衷案として「重点産業への選択的投資」という中間路線も想定される。
中国経済が減速すれば、日本や東南アジアの輸出・素材産業への波及は避けられない。
人民元為替、資本移動、金融政策の動向も注視が必要だ。
まとめ
- 四中全会は「第15次五年計画」策定の中核会議
- 経済は統計上堅調でも、家計・企業の実感は冷え込み
- 改革と統制の綱引きが続く中、政策方向が焦点に
出典(外部リンク)
- 中央社:「人民日報が連続7本の経済評論を掲載」
https://www.cna.com.tw/news/acn/202510070034.aspx - UDN/経済日報:「四中全会、内需とガバナンス強化が焦点」
https://money.udn.com/money/story/5603/9053842 - 自由時報電子報:「北京消費 -11.4%、実感と統計の乖離」
https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/5203533 - 聯合報:「UBS、中国『十五五』計画で年4.5〜5%成長を予測」
https://udn.com/news/story/7333/9057772