
中国IT業界の草分け、肖慶平氏がチベットで死去
中国IT業界の先駆者であり、著名な天使投資家でもある肖慶平(しょう・けいへい)氏が、チベットでの交通事故により死去した。中国メディア「鞭牛士」や「欧風美雲」など複数の報道によると、10月7日に訃報が伝えられ、事故は6日に発生したとみられる。肖氏は北京掌上通網絡股份有限公司(新三板上場、証券コード430093)の董事長を務め、中国初代IT従事者として知られていた。
肖氏のSNSアカウントは2025年10月5日の投稿を最後に止まっている。生前親交のあった公益活動家の鄧飛氏は、追悼の言葉を投稿した。肖氏は「天使百人会」の発起人であり、同ファンドの創業マネージングパートナーでもあった。
経歴と投資の歩み
肖氏は1964年湖南省生まれ。1983年に湖南大学を卒業し、1991年に対外経済貿易大学で修士号を取得。1999年には中国人民大学博士課程に進学した。
卒業後は湖南の外貿工場で車間主任を務めたが、香港の取引業者に「貿易を知らない」と軽視され、独学で猛勉強。150対1の倍率を突破して大学院に進学した。
修了後、海南に渡り実業に挑戦。1995年の米国出張でIT産業の可能性に着目し、同年に威龍電脳へ80万元(約1600万円)を投資した。のちに同社は上場企業に買収され、肖氏は資金を回収。
1997年には北京で中保信託投資公司の設立に参画し、黎明期のIT企業連邦軟件に投資。そこから派生した「8848」は中国初の電子商取引企業として一世を風靡した。
1999年に銀河証券設立を機に投資家として独立。新浪(シナ)や聯衆遊戯(UUGAMES)などに出資し、中国IT産業の成長を支えた。
2000年には旅行サイト「中国旅游資訊網(chinaholiday.com)」を支援し、同年に携帯インターネット企業「掌上通」に出資。2001年に経営を引き継ぎ、2011年に新三板上場を実現した。2013年には天使投資ネットワーク「天使百人会」を設立。2021年までに40以上のプロジェクトへ投資していた。
若手実業家の死去が相次ぐ
肖氏の死去を報じた「欧風美雲」は、「今年に入り、居然之家の汪林朋氏、雲海肴の趙晗氏、越疆科技の曾宇氏など、壮年期の経営者の死が相次いでいる」と指摘。中国の創業者層に共通する「健康・安全・資産承継の脆弱性」を浮き彫りにした。
2025年には、家具小売大手のトップが自宅から転落死(AlertChina関連記事)、浙江大学の48歳教授が過労死と報じられた(関連記事)。
また、2024年7月にはサイバーセキュリティー会社創業者が急死(関連記事)、2024年6月には画像認識システム大手の共同創業者が55歳で亡くなった(関連記事)。2023年にはアパレル大手・杉杉集団の鄭永剛氏が東京滞在中に急死している(関連記事)。
これら一連の事例は、過重労働や心理的負荷、頻繁な出張など、企業家特有の生活習慣が健康リスクを高めていることを示している。
「三重の防衛線」―リスクと資産承継
「欧風美雲」は論評の中で、企業家の突然死を「社会的警鐘」とし、資産と生命の両面でのリスクマネジメントを呼びかけた。
記事は、
①生命保険による人的リスクの移転、
②香港保険やオフショア信託を利用した資産隔離、
③遺言・株式承継・後継者育成など相続設計、
の三重構造を提唱。「不確実な時代に確実な備えを持つことこそ、家族と企業への責任」と説いている。
香港保険の高額補償・通貨分散・迅速な国際支払いネットワークは、創業者死亡時の経営継続リスクを軽減する手段として注目されている。
起業家社会に突きつけられた課題
肖慶平氏の死は、単なる個人の悲劇ではない。起業家社会全体が「命と富のリスク」を直視しなければならない局面にある。特に中年層の経営者は、長時間労働や海外出張、自然条件の厳しい地域への渡航など、事故・健康リスクが高い。
「どれだけの富を築くか」ではなく、「いかに守り継ぐか」。それが今、創業者層に求められている視点だ。
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出典:
・欧風美雲「从企业家意外离世看资产安全规划的紧迫性」
https://finance.sina.com.cn/roll/2025-10-08/doc-inftcwtr0582513.shtml
・星島頭條「中國首代IT從業人天使投資人肖慶平-西藏車禍去世」
https://www.stheadline.com/realtime-china/3506461/