
中国の格付機関に相次ぐ処分、一貫性原則違反が焦点
2025年8月以降、中国では少なくとも6社の信用格付機関が監督当局から警告や罰金の処分を受けた。対象はS&P中国、中債資信、上海新世紀、聯合資信、東方金誠、中証鵬元である。
処分の中心は「一貫性原則違反」だった。S&P中国は証券格付業務で同一基準を守らず、情報開示も不十分とされ、北京証監局から警告書を受けた。聯合資信は同一対象に二重基準を適用し、銀行間市場取引商協会から厳重警告を受けた。東方金誠も一貫性原則を順守せず、62万元の罰金を科された。
S&P中国や中債資信に警告 情報開示不足・独立性違反
上海新世紀と東方金誠は「低料金を約束して業務を受注した」点が問題視され、それぞれ66万元と62万元の罰金を受けた。中債資信は従業員の登録不履行、情報開示不足、独立性違反が指摘され、327万元の罰金と責任者への追加処分が下された。
さらに中証鵬元は、契約前に格上げ提案を送付し、営業と格付業務の分離を徹底していなかったことが発覚。協会から警告を受け、担当者は批判公表された。
2019年制定の格付業管理暫行弁法が根拠
一連の処分は、2019年に施行された「信用格付業管理暫行弁法」に基づく。格付の一貫性、営業慣行の規制、従業員登録、情報開示の徹底、独立性保持が明文化されており、当局はその遵守を改めて厳格化している。
処分を下した機関は、中国人民銀行、証監会、銀行間市場取引商協会と多岐にわたり、金融市場における監管強化の網が広がっている。
外資系S&P中国も対象 規制強化は外国企業にも及ぶ
特に注目されるのは、唯一の外資独資格付機関であるS&P中国が処分対象となったことだ。北京に設立されたS&Pグローバルの子会社は、中国市場で全面ライセンスを持つ唯一の存在だが、国内規制の厳格な順守を迫られている。
こうした監管強化は外国コンサルティング会社にも広がっており、中国国家安全省はすでに「外国コンサルに警戒」を呼びかける動画を公開している【関連記事:外国のコンサルに警戒 国安省が警告の短編動画公表】。
外国コンサル捜査への警戒 市場心理にも影響
外国コンサル企業への監視は強まっており、米紙WSJは米コンサル会社幹部への出国禁止措置を報じた【関連記事:米コンサル会社幹部、中国が出国禁止=WSJ報道】。また、在中のEUと米国の商工会は、コンサル企業への捜査拡大に不安を示した【関連記事:在中のEUと米商工会=コンサルなど捜索に不安表明】。格付機関と同様に外資系のムーディーズも調査を警戒し、職員に在宅勤務を指示している【関連記事:ムーディーズ、中国職員に在宅勤務指示 捜査を警戒】。
今回の一連の処分は、金融市場の透明性と規範性を高めるための措置であり、当局の強い規制姿勢を示している。ただし、規制強化は株価低迷の直接的な要因ではないものの、投資家心理を冷やし資本流出を促す間接要因となる可能性がある。