
米国メディアは、ドナルド・トランプ大統領が10月末に韓国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)ビジネス・リーダーズ・サミット期間中に、中国の習近平国家主席と会談する可能性を報じた。ホワイトハウス関係者によれば、トランプとその側近はすでに「静かに」訪韓の準備を進めており、米中首脳会談の調整が水面下で進行しているという。
米中首脳は直近の電話会談で対面会談に向けて準備を進めており、懸案の一つだった動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」問題はすでに売却合意が正式承認された(関連記事:トランプ大統領、TikTok売却合意を正式承認)。今後は関税や台湾問題など、より根深い外交課題が焦点となる。
出典韓国・慶州で10月末にAPEC開催
2025年10月31日から11月1日、韓国南東部の古都・慶州市でアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会談が開かれる。加盟21カ国・地域の首脳が集まり、域内経済の成長戦略や貿易協力、先端技術や安全保障に関する課題を話し合う予定だ。今回の会議は、米中両大国の首脳が直接顔を合わせる場となる可能性が高く、世界の注目を集めている。
トランプと習近平、直接会談を水面下で準備
米国メディアは、ホワイトハウス関係者の話として、トランプ大統領が韓国訪問を「静かに」準備していると報じた。会期中に習近平国家主席との首脳会談を実現させる方向で調整が進んでおり、慶州で「川習会」が再び開かれる見通しだ。
両国は直近で電話会談を行い、対面協議に向けて基盤を築いてきた。懸案の一つだった動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の処理はすでに決着し、トランプ大統領が売却合意を正式承認した(関連記事:トランプ大統領、TikTok売却合意を正式承認)。そのため慶州での会談は、関税や台湾問題など、より根深い外交課題に焦点が移るとみられる。
北朝鮮情勢と米朝会談の可能性
報道はさらに、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩総書記と会談する可能性に触れている。ただし金正恩が慶州の会議に出席するかどうかは依然として不明だ。もし実現すれば、シンガポールやハノイ以来となる米朝首脳会談であり、停滞する朝鮮半島情勢に大きなインパクトを与えることになる。
トランプ外交は「突然の仕掛け」が特徴であり、米中首脳会談に加えて米朝対話が加われば、APECは北東アジア外交の一大転換点となる。
韓国外相が王毅中国外相と会談し、習近平の出席を歓迎したことも伝えられている。米中間ではすでに外相同士の電話会談が行われ、王毅外相は「米国の消極的姿勢が関係改善を妨げる」と批判した一方、ルビオ国務長官は「対話継続の重要性」を強調している(関連記事:米中外相が電話会談)。
こうしたやり取りを経て迎える米中首脳会談は、両国関係の緊張を管理し、協力の糸口を探る重要な場になる。
焦点は関税、台湾、レアアース
慶州での米中会談が実現すれば、議題は多岐にわたる。農産品やエネルギー取引の拡大といった経済協力だけでなく、台湾問題や南シナ海での軍事的緊張といった安全保障課題も避けられない。
とりわけ、軍事用レアアースをめぐる交渉は大きな障害となっており、米中の摩擦が貿易と安保の両面で複雑に絡み合っている(関連記事:米中貿易交渉、軍事用レアーアースが障害か)。
米中双方が自国経済の回復と安定を求めるなか、農産品やエネルギー取引、AI・半導体分野での規制緩和交渉が行われる可能性もある。直接対話が、対立管理から協力模索へと展開できるかどうかが世界経済の鍵を握る。