韓国、対中ビザ免除を9月29日開始 中国大使館が観光客に「反中デモ警戒」と安全指示

韓国は9月29日から中国団体旅行客に対するビザ免除政策を開始する。観光需要回復を狙う一方、ソウルでは中国人を標的にしたデモが散発しており、中国大使館は訪韓旅行者に集会から距離を置くよう警告した。政治的発言を控え、ドローンやカメラの使用にも注意を呼びかけている。

韓国の対中ビザ免除政策が正式スタート

韓国政府は観光業の振興と両国の民間交流を目的に、9月29日から中国人団体旅行客に対するビザ免除政策を開始した。対象は3人以上で特定旅行会社を通じて申し込みを行った中国本土の旅行者で、最大15日間の滞在が可能となる。この措置は2026年6月30日まで試験的に続けられる予定だ。

国慶節と中秋節が重なる今年の大型連休では、多数の中国人観光客が韓国を訪れる見込みだ。浙江省の「潮新聞」によれば、旅行会社関係者は「韓国旅行の申し込み人数は前年より50%増加した」と述べている。ファッションブランドや化粧品など、韓国のショッピング環境が特に若い世代に人気となっている。


ソウルで相次ぐ「反中」デモ

一方で、ソウルの繁華街・明洞や大林洞では、中国人を標的にしたデモが断続的に発生している。今年9月には中国大使館近くで極右団体が「反中」集会を行い、商店との摩擦も生じた。韓国の李在明大統領は「言論の自由の範囲を逸脱している」と批判し、関係当局に制裁措置を検討するよう指示した。

こうした状況を受けて、中国大使館は繰り返し警告を発表している(関連記事:中国大使館、韓国反中デモに抗議 観光客らに注意喚起)。訪韓旅行者にとって、安全確保は観光そのものと同じくらい重要な課題となっている。


中国大使館の安全指示

在韓中国大使館は27日、公式微信アカウントで「高度の警戒を保ち、示威者との言葉や身体的な衝突を避けること」を強調した。また、交通規制や突発的なトラブルに備えて冷静に行動し、安全を最優先するよう呼びかけた。

さらに、観光客が守るべき具体的なルールも示された。軍事施設や情報機関の建物を撮影しないこと、「撮影禁止」の標識に注意すること、そして無人機(ドローン)の使用を避けることだ。特に無人機については、今年8月に済州島で中国人旅行者2人が海軍基地を撮影し拘束される事例が発生しており、再発防止が求められている。


旅行者への追加注意点

大使館はまた、越境賭博や違法行為への関与を避け、旅行会社やツアー商品の選定も慎重に行うよう促している。観光人気の高まりとともに、違法業者や不正ツアーのリスクも増しているためだ。

韓国側は観光誘致を通じて経済活性化を狙うが、反中感情の高まりは両国関係の課題となっている。今後、観光需要の拡大と社会的摩擦回避の両立が問われることになる。


関連情報(過去の事例)

韓国と中国の間では、THAAD(高高度防衛ミサイル)配備を巡る対立が長年の懸案となってきた。過去には配備作業が中国への配慮から遅れたと指摘されることもあった(関連記事:韓国でTHAAD配備作業に遅れ、中国に配慮か)。

また、韓国ロッテグループが市民の反発を受けて北京の店舗21店を売却した事例もある(関連記事:ロッテマートが北京の21店売却=THAAD配備で市民反発)。こうした経緯は5年以上前の出来事ではあるが、現在の反中感情の背景を理解する上で参考となる。


参考リンク

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