新疆ウイグル自治区成立70周年 習近平主席「社会安定を全力で維持」

習近平、自治区成立70周年式典に出席

中国国家主席の習近平は9月24日、新疆ウイグル自治区成立70周年記念行事に出席するため区都ウルムチを訪問した。自治区の周年式典に最高指導者が出席するのは初めてであり、政治局常務委員の王滬寧と蔡奇を伴う異例の高規格訪問となった。式典は、中国指導部が新疆の安定と発展を最優先課題としていることを強く示す場となった。

「治疆方略」を全面貫徹

習近平は新疆党委員会と政府の業務報告を聴取し、「新時代の治疆方略を完全かつ正確に全面的に貫徹する」と強調した。さらに「新疆の大局的安定を全力で守る」「反テロ人民防線を築く」と述べ、各民族住民が正しい国家観・歴史観・民族観・文化観・宗教観を持つよう導く必要性を訴えた。

この演説は、国内統治と安全維持を一体で進める中国共産党の方針を改めて確認するものだった。

経済発展と米国制裁の影響

一方で習近平は、新疆経済の高品質発展も重視する姿勢を示した。競争力ある産業集群の育成や科学技術革新、文化観光産業の強化、生態環境の保護を課題に掲げた。シルクロード経済帯核心区の建設を加速させ、国内外「双循環」戦略の中でより大きな役割を果たすことも求めた。

ただし新疆経済は、米国による制裁の影響を大きく受けている。米国政府はウイグル族の強制労働問題を理由に中国企業を輸出禁止リストに掲載しており、「米、中国企業3社禁輸リストに掲載 新疆で強制労働」の記事でも詳しく報じられているように、現地経済への打撃は深刻だ。現地当局も輸出制限や失業の増加を認めている。

さらに、新疆から撤退する外国企業も出始めている。例えば「バスフが新疆合弁会社から撤退へ VWにも圧力」が示すように、欧州の大手化学企業は人権問題を理由に事業見直しを余儀なくされている。

一方で中国政府は国際的批判に対抗するため、新疆の発展ぶりをアピールしている。「49カ国代表集め『新疆交流会』 経済の発展ぶり強調」にあるように、多国間の会議でインフラ整備や産業発展を誇示し、対外イメージの改善を試みている。

軍区人事の異変

式典に先立ち習近平は新疆各界代表や駐屯部隊将兵を接見したが、新疆軍区の柳林司令員(中将)と楊誠政治委員(中将)は欠席した。代わりに元空降兵軍軍長の文東が陸軍中将の制服で登場しており、新疆軍区司令員への昇格が濃厚とみられている。人民解放軍では反腐敗運動が継続しており、今回の異例の欠席もその延長線上にある可能性がある。

過去には西蔵自治区の記念行事でも軍区司令員が不在で、軍内部の人事刷新が相次いでいることがうかがえる。

民族団結演出と政治的メッセージ

習近平の到着時には、民族衣装を着た住民や子どもたちが沿道で歌や踊りを披露し、「習大大、私たちはあなたを愛しています」と記された横断幕で歓迎した。中国中央テレビは「親愛なる総書記、私たちの生活はヤクシ(素晴らしい)」との横断幕も放映した。

新華社によると、習近平は25日に自治区成立70周年記念大会に出席する予定。先月の西蔵自治区成立60周年に続き、2カ月連続で少数民族地域を訪問したことになり、習近平政権が国境地帯の安定を国家戦略の最優先に据えていることを強く印象づけた。


まとめ

今回の新疆視察は、経済発展と民生改善を語りつつ、社会安定の維持を最優先とする習近平の姿勢を明確に示した。米国制裁による経済打撃、外国企業の撤退、国際社会への説明努力、そして軍区人事の異変はいずれも、北京が新疆統治を強化し続ける決意の現れである。

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