広州で整形外科主任が襲撃され重傷
9月22日、広州中医薬大学第一付属病院で整形外科センター主任の王海彬教授(54)が外来診療中に患者から刃物で襲撃され重傷を負う事件が発生した。襲撃犯はその場で逮捕され、王教授は緊急手術を受けた後に集中治療室(ICU)に搬送された。命の危険は脱したが、多臓器に深刻な損傷を負い、右手の正中神経も断裂しており、回復は容易ではない。
関係者によれば、襲撃犯は数年前に王教授が膝関節手術を行った患者で、1週間前にも診察を受けに来ていた。当日午前、この患者は刃物を持って診察室に入り、扉を内側から施錠して犯行に及んだ。王教授は複数箇所を切りつけられ、出血多量となったが、医療チームの迅速な対応により命を取り留めた。
事件後の病院対応と学生の証言
事件後、病院は当該外来を閉鎖し、院内の警備を強化した。ネット上では「同行していた学生も負傷した」との噂が流れたが、病院関係者はこれを否定し、無傷だったと明らかにした。実際に同行していた学生は、「王先生は研究、臨床、教育すべてに全力を尽くしており、患者への対応も極めて丁寧だった。手術技術も高く、学生や患者から信頼を集めていた。先生の回復を心から願う」と証言している。
さらに事件当夜、紅星新聞の記者が病棟を訪れたところ、廊下には王教授への感謝の手紙が多数掲示されており、入院患者たちも「先生の身に起きたことは大変残念だ」と口々に語った。
王海彬教授の経歴と実績
王教授は1971年4月生まれで、人工関節や股関節の専門家として30年以上にわたり臨床と研究に従事してきた。人工関節置換手術の執刀数は2000例を超え、現在は広州中医薬大学の国家重点学科「整形外科実験室」主任を務めている。所属する整形外科は1980年代に設立され、華南地域の人工関節置換トレーニング拠点として難症例の治療に取り組み、国内有数の実績を誇っている。
中国各地で相次ぐ医師襲撃事件
今回の事件は孤立したものではない。中国では近年、病院内での医師襲撃事件が繰り返し発生している。天津では刃物を持った男が病院で暴れ、医師ら6人が死傷する事件が発生した(関連記事はこちら)。浙江省では診察中の医師が刃物で刺され死亡し、犯行後に加害者自身も投身して死亡する事件が起きた(詳細)。また重慶では、患者家族が医師を刺殺する恨みに基づく犯行が報じられ(記事リンク)、浙江省の病院では爆発物によって複数の負傷者が出た(こちら)。さらに、病院内での銃撃事件も起きており、医師が重傷を負う事態に至っている(記事を見る)。
このような連続事件の背景には、医師と患者の関係の緊張や、社会的な不満が反映されているとみられる。中国全土で医療現場の安全をいかに確保するかが大きな課題となっている。
今後の課題
広州の事件では、病院は「詳細は調査中」としているが、医療従事者の安全確保に向けた制度的な対策や警備強化が急務であることを浮き彫りにした。中国全体で医師襲撃事件が後を絶たない現状は、社会全体が解決すべき深刻な問題となっている。