「九一八事変」94周年、中国で反日気運が高まる 映画「731」公開、評価割れる

記念行事と反日意識の高まり

1931年の「九一八事変」から94周年を迎えた9月18日、中国各地で抗日の記念行事が行われた。瀋陽の「九・一八」歴史博物館広場では午前9時18分に鐘打ちと警報式典が行われ、14人が「14年抗戦」を象徴する14回の鐘を鳴らした。遼寧省全域で防空警報が響き、歩行者や車両が動きを止め、船舶や列車も汽笛を鳴らすなど街全体が厳粛な空気に包まれた。深センでも全市規模の防空警報試験が行われ、市民に「忘れるな九一八」を呼びかけた。

黒竜江省では、旧日本軍による中国人労働者の強制連行や奴隷労働に関する62件の資料が初めて公開され、戦争犯罪の証拠がさらに加わった。こうした動きは、過去に取り上げた反日運動関連の報道ともつながっており、当局による愛国主義教育の強化を裏付けている。

映画「731」初日から歴代首位

この日に合わせて公開された映画「731」は、旧日本軍731部隊の細菌戦を描いた作品で、「決して忘れない」「歴史を銘記し、国恥を忘れるな」とのスローガンを掲げた。初日の前売上映回数は23万6000回を超え、中国映画史上初日の上映記録を更新。観客の「見たい」登録は446万人に達し、午後2時時点で興行収入は20億元に到達。夜には30億元を突破し、興収比率は97%に達した。累計観客動員数は500万人を超え、初日の総上映回数と興収で歴代首位となった。

映画の上映時間は125分で、市井の小人物の視点から731部隊の残虐行為を描く。凍傷実験や毒ガス実験、生体解剖などが盛り込まれ、観客に衝撃を与えた。製作には黒竜江省や山東省、吉林省など複数の党委宣伝部が参加し、長春映画集団などが出資。公開前日の17日にはハルビン市で世界初上映イベントが開かれ、黒竜江省の許勤党委書記や藍紹敏政協主席が出席した。

歴史教育と映画の役割

旧日本軍731部隊罪証陳列館の金成民館長は「戦時は極秘、戦後も隠蔽され、多くの事実は明らかになっていない。この映画を通じて731部隊の暴行を知ってもらいたい」と述べた。監督の趙林山氏も「膨大な資料を基に芸術的に表現し、歴史的責任を伝え、平和の力を結集したい」と語っている。

こうした「731」をめぐる動きは、過去に紹介した731部隊関連の記事とも関連し、中国が歴史問題を通じて対日世論を強化していることを示している。

ネット上での賛否両論

しかし評価は大きく分かれている。映画評価サイト「豆瓣電影」では「国産映画の進歩」「歴史の真相を再現した」との高評価がある一方、「監督の力量不足で叙事が混乱」「ネットドラマのように粗雑」との酷評も目立った。上映中に観客が笑い声をあげたとの証言もあり、真剣さを欠くとの批判が広がった。

微博の議論でも「題材は良いが出来が悪い」「歴史を裏切った」とする意見が優勢。他方、“小粉紅”は「初日から批判するのは“精神的日本人”だ」と反論し、賛否が激しく対立している。

政治・社会への波及効果

日本の在中大使館・領事館は、昨年深センで日本人が治安事件に巻き込まれた事例を踏まえ、在留邦人に対して「敏感な記念日には周囲に注意し、不要な外出を控えるように」と注意喚起した。

一方、社会の対日姿勢には温度差もある。習近平総書記は抗戦勝利80周年総括行事で「記念活動を愛国主義教育の生きた教材とすべきだ」と強調したが、民間では訪日旅行が依然として人気を保っている。日経中文網によれば、訪日中国人観光客の一人旅比率は23.5%に達し、他国と比べても高い水準にある。

出典

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