米中、TikTokで枠組み合意 米国側所有移転か 中国「技術輸出は法令で審査」

マドリードで4度目の米中経済協議

米国と中国は9月中旬、スペイン・マドリードで経済貿易協議を開き、国際版「抖音(TikTok)」を巡る問題で「基本的な枠組み合意」に達した。これは今年5月の一時休戦確認以降、欧州各地で続く交渉の一環で、今回で4度目となる。米財務長官スコット・ベッセントは会談後、「TikTokを米国側所有とすることで双方は合意した」と述べ、最終決定はトランプ大統領と習近平国家主席が金曜に行う電話会談で確認されると明らかにした。

会場となったのはスペイン外務省庁舎「サンタクルス宮」。協議は2日間にわたり行われ、初日は約6時間に及ぶ会談となった。焦点はTikTokのほか、関税政策や経済規制にも及んだが、TikTokを巡る進展が最も注目を集めた。

中国は「枠組み合意」と表現、技術輸出審査を強調

中国側は合意内容について「枠組み共識」とのみ説明し、所有権移転には言及しなかった。交渉団長の何立峰副総理は「中国は国家利益と海外における中国企業の正当な権益を断固守る」と強調し、「TikTokに関する技術輸出は法令に基づいて実施する」と述べた。

商務部の李成鋼副部長も「経済や技術を政治化・武器化することには断固反対し、原則や企業利益を犠牲にしてまで合意することはない」と発言。双方はTikTok問題で率直かつ建設的な対話を行い、投資障害を減らす方向で「基本的枠組み」に達したと説明した。

TikTokをめぐる米国内の圧力

TikTok問題は米議会が親会社バイトダンスに米国内での経営権放棄を迫ったことに端を発する。従わなければアプリを禁止する枠組みで、トランプ政権は発効期限を三度延期した。現行の期限は9月17日で、この日にもTikTokが米国から削除される可能性がある。

ベセン長官は「商業条件は既に合意済みで、期限は延長される可能性がある」と述べた。中国側との合意は、米国がサービス停止をちらつかせ、関税や輸出規制での譲歩を求めない形で実現したと米側は強調している。

関連ニュースとして、過去には 米議会のTikTok禁止法案に関する記事 でも同様の動きが報じられていた。

焦点はアルゴリズムの扱い

合意の核心はTikTokのアルゴリズムにある。米国で1億7000万人超が利用する同サービスの強みは独自の推奨システムで、中国側はこれを売却しない方針とされる。未確認情報では「アルゴリズムを再構築する」案も浮上しているが、米議会が承認するかは不透明だ。過去にも3月に合意が発表されたが署名に至らなかった前例があり、今回も最終妥結には懸念が残る。

この問題に関連して、 米中間のデータ安全保障を巡る摩擦 も大きな焦点となっている。

関税・経済政策は進展なし

今回のマドリード協議では、TikTok以外に関税や経済政策も主要議題となった。しかし目立った成果はなく、ベセン長官は「中国の要求は非常に攻撃的で、米国は国家安全保障を犠牲にする用意はない」と述べた。米通商代表グリールは「TikTok問題は解決に近づいている。中国と良好な関係を維持したい」と語った。

一方で、 米中の報復関税応酬 に関する記事が示すように、根本的な対立は依然として残っている。

過去の交渉経緯と今後の展望

米中は5月のジュネーブ休戦確認後、欧州各地で交渉を継続。6月のロンドン会談では、中国がレアアース輸出を一時再開し、米国は一部製品の販売制限を緩和したが、中国は輸出許可に半年の期限を設け、緊張再燃に備えた。7月のストックホルム会談では90日の休戦延長と報復関税削減、レアアース輸出再開で合意している。

関連して 中国のレアアース輸出政策 に関する記事も参照されたい。

また、中国は米エヌビディアに対する独禁法違反の予備調査を開始しており、 エヌビディア規制を巡る動き も新たな火種となっている。

今回のマドリード協議は、TikTokを巡る一定の歩み寄りを示したが、アルゴリズムの扱いや所有権移転の最終判断など未解決の論点は多い。関税摩擦や輸出規制を含む深い対立が残る中、TikTok合意が米中経済関係全体に安定をもたらすか、今後の首脳協議と議会判断が注視される。

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