シャオミで発生した人事異動の全貌

シャオミ(小米)は2025年9月8日夜、社内通達を発表し、中国区市場部総経理の王騰を解任した。理由は「会社の機密情報漏洩」と「利益相反」に関わる重大な違反行為だった。社内規定である「社員違規違紀行為処理弁法」「誠信廉潔守則」に基づき、厳格な処分が下された。
報道によれば、王騰の社内通信アカウントはすでに「使用停止」と表示されており、職務停止の措置が即日実施されたことがわかる。
王騰の経歴と社内での役割
王騰は2016年に29歳でシャオミへ入社し、製品総監を経て2020年にはREDMIチームに参加。REDMI K40シリーズの開発を主導し、ブランドの人気拡大に貢献した。2021年から2023年にかけては河南分公司に出向し、地域市場の営業を担当。
2023年に本社へ復帰後はREDMIブランド発言人として活動し、2024年にはREDMIブランド総経理に昇格。さらに同年末には中国区市場部総経理を兼任し、スマホ事業の中核を担う存在となっていた。
過去の“ネタ漏洩”と今回の深刻さの違い
王騰氏はこれまで、微博で未発表の製品情報を冗談交じりに投稿することが多く、ユーザーから「爆料大王(リーク王)」と呼ばれていた。こうした“漏洩キャラ”は宣伝効果の一部として扱われ、社内でも罰金程度の軽い処分で済んでいた。2024年8月のライブ配信では創業者の雷軍氏が「王騰はしょっちゅう情報を漏らして罰金を払っているが、それ以外は評判は悪くない」と冗談めかして語ったほどだ。
しかし今回の通達では、王騰氏が実際に企業機密を外部へ漏洩し、利益相反につながる行為を行ったとされている。過去の“ネタ的なリーク”とは次元が異なり、コンプライアンスを揺るがす深刻な違反と判断されたため、最終的に解任という厳しい処分に至った。
SNSでの反響と王騰氏の謝罪
解任が決まった同日深夜、王騰氏は自身の微博に「とても恥ずかしく思い、皆さんに申し訳ない。過去にいくつかの誤りを犯し、その代価を受け入れる」と投稿した。さらに「雷軍総裁や幹部への感謝」と「今後もシャオミとREDMIを応援する」意志を表明した。
もっとも、王騰氏の微博認証はすでに削除され、動画アカウントでも表示変更が行われている。SNS上では「単なる冗談の“漏洩”が本当に解任につながったのか」という議論も起きている。
今後の展望と業界への影響
今回の解任は、シャオミにとって人材管理やブランド戦略に影響を及ぼす可能性がある。王騰はREDMIブランドを若年層向けに刷新した立役者であり、その離脱は市場戦略に一定の空白を生むかもしれない。
一方で、シャオミはここ数年、セキュリティや情報管理の強化を進めてきた。中国企業では過去に、アリババから個人情報12億件窃取 2人に有罪判決 や アップル中国従業員が氏名やIDなど顧客個人情報を販売、22人逮捕 といった深刻な事件も起きている。さらに国際的にも、Reuters – China’s tech data leaks が指摘するように、中国IT業界の情報管理は世界的な注目を浴びている。
そのため今回の処分は、シャオミ社内だけでなく業界全体に警鐘を鳴らす事例となるだろう。