南シナ海の領有権を巡り、米中日豪やフィリピン、ベトナムが争う中、ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長が中国を訪問、習近平総書記から歓迎を受けて、中越の接近を印象づけた。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)4カ国とオーストラリアを訪問した安倍晋三首相は、オーストラリア、インドネシアと関係を強化しつつある。各プレーヤーの動向は全て、南シナ海の争いに影響を与えそうだ。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が伝えた。
グエン書記長は12日から4日間、中国を訪問し、習総書記と茶を飲みながら懇談した。グエン書記長はこれまでも習総書記との交流を繰り返している。今回の訪問には、外交部門と軍部の高官を伴った。
訪問後の声明は、両国は今後、全面的な交流の展開をうたっており、長きにわたり和解が難しいとみられた両国の南シナ海を巡る紛争は、どこかに埋もれてしまった。
背景にはイデオロギーの問題がある。ベトナムは政情が不安定で、民主化を求めるいわゆる「カラー革命」の危機に直面。グエン書記長は16年1月、70歳を超えてなお続投が決まった。ベトナム共産党の統治継続のため、イデオロギー上の友である経済大国の中国に依存する必要がある。ベトナムからみて、中国は唯一、学習可能なモデルだ。
ベトナムは南シナ海の問題で、日米と協力するように見えたが、中越の新しい関係は、両国が全面的な対立関係にはならないことを示している。
一方、安倍首相は14日、オーストラリアのシドニーでターンブル首相と会談。南シナ海の問題で、両国が米国と連携し、中国をけん制することで一致した。
安倍首相はこれに先立つ12日、フィリピンを訪問してドゥテルテ大統領と会談して1兆円の経済援助を約束。フィリピンに多額の援助を提供した中国に対抗する姿勢を示した。15日には、インドネシアのジョコ大統領と会談。南シナ海の問題で協力を強めることえ一致した。
インドネシアは、中国漁船が中国が領有権を主張する海岸線内で漁を繰り返していることに、強く反発している。日本はインドネシアに海上警備用の施設提供や、インドネシアの離島における水産加工業の振興などへ協力申し出た。さらに年内に外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)を行うことでも一致した。
安倍首相は16日からベトナムを訪問、グエン・タン・ズン首相と会談。南シナ海の航行の自由確保で一致した。日本はベトナムの求めに応じ、新造の巡視船6隻の提供と1100億円以上の借款の供与に同意した。中国が南シナ海で進める軍事基地建設に対し、日越は海洋の安全の分野で連携することで合意した。
中国に接近するベトナム、日本と結ぶインドネシア
