仲裁裁定で北京当局が戦時対応の指令、世論激化警戒か

 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、中国の南シナ海進出を巡り、フィリピンが申し立てていた仲裁手続きで、中国が管轄権の根拠とする「九段線」には国際法上の根拠がないとの裁定を言い渡した12日、北京市の当局は、各機関に対し「戦時状態」に対する緊急対応を行うよう指令した。米国在住の中国人評論家、何清漣氏は、指令は対外戦争ではなく、世論の激化による不測の事態に備えたものと指摘している。米公共放送ボイス・オブ・アメリカ中国語版が伝えた。 

 北京市当局の指令書によると、「戦時状態」への対応期間は12日午前8時から17日午前零時まで。情報収集と世論対策を強化し、突発事件に備えるよう求めている。何氏によれば、国内向けの治安対策であることは明らか。実際、民衆の抗議行動に備え、北京のフィリピン大使館周辺などでは、警備が強化された。

 何氏によると、南シナ海の問題を巡りネット世論は(1)中国政府と全く同じ意見(2)中国政府をからかう(3)むしろ中国の利益を損なうとして「九段線」に否定的――の3種類がある。中国政府は、政府の意見と同じ(1)と、理性的な(3)には警戒していない。しかし当局は、政府をからかう(2)の意見を持つ市民の中に、この機会を利用して騒ぎをたくらむ者がおり、しかも北京在住者が少なくないとみている。

 また、何氏によると、数年内に南シナ海で軍事衝突する可能性は小さい。フィリピンなど東南アジア各国が頼みとする米国では、オバマ政権下で兵力を45万人に削減する軍縮計画が進んでいる。また、米国世論の過半数が海外の紛争への干渉に反対するなど、戦争の準備ができていない。 

 中国政府も▽国内対立が先鋭化している▽軍改革の進展で指揮系統が混乱中▽中国海軍が米国に劣る▽軍事的に失敗すれば習近平国家主席は失脚の恐れ――などの理由で戦争を避けたいというのが本音とみられる。

 

(参考)http://www.voachinese.com/a/heqinglian-china-war-status-20160713/3417228.html

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