ロシアへの売却契約が破棄された、フランスのミストラル級強襲揚陸艦2隻が、中国に売られるのとの海外の報道に対し、欧米との外交的な摩擦や、価格が高すぎることなどを理由に「全くあり得ない」とする評論を、保守系の中国のニュースサイト「環球網」がこのほど掲載した。
評論は、電子掲示板への掲載の形をとっているが、中国のメディアに、一般市民の政治的意見がそのまま掲載されることはほぼない。国のシンクタンク、中国社会科学院のウエブサイトなども相次いで転載しており、海外の報道に対する中国の準公式の反応といえそうだ。
仏強襲揚陸艦「ディズミュド」2隻とフリゲート艦「アコニト」からなる仏艦隊が9日、1週間の友好訪問を目的に上海港に寄港。中国寄りの論調で知られる台湾紙・中国時報など、海外メディアが、仏強襲揚陸艦2隻を中国が購入する可能性があると伝えた。
評論によると、中国への売却があり得ない最大の理由は、米国による妨害だ。
米国は1989年以降、兵器と軍事技術の対中輸出を一貫して制限してきた。中国が旧ソ連の空母「ワリャーグ」を購入した際も、米国に阻止される可能性が高かった。2001年に9.11米同時多発テロ事件が起き、米国が反テロ活動で中国の協力を必要としたため、たまたま実現したのに過ぎない。 EUも1989年、加盟国による対中武器輸出禁止を宣言したが、法的拘束力はない。何を禁輸対象にするかは各国の判断に委ねられているが、米国の反発を恐れて完全な禁輸を続けている。
また、中国側の事情をみても、仏強襲揚陸艦を買う必要が全くないのだという。
評論によると、中国の武器輸入は「自国で生産できる兵器は買わない。先進兵器は必要な範囲で少しだけ買う。模倣できる兵器はなるべくまねる」との法則がみられる。
仏強襲揚陸艦は、中国製の071型揚陸艦に比べて先進性がなく、価格は6億ユーロ(約820億円)と数倍だ。中国海軍の規格に合わせて改造すれば、さらに巨額の費用が掛かる。乗組員をフランスで訓練することも必要になる。
中国が自主設計し、国産装備を載せた3万6000トンの揚陸艦2隻が近く完成する。中国の揚陸艦建造能力は既にフランスを上回る。評論によると「中国が外国軍艦を羨望する時代はとっくに終わっているばかりか、自国産兵器を誇る気持ちすらある」のだという。