中国がチベットに大水力発電所建設 インドなどが懸念

25年7月23日ダム ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)などによると、中国政府はこのほど、チベット自治区のヤルンツァンポ川下流域において、世界最大規模となる水力発電プロジェクトに正式に着工した。プロジェクトの総投資額は約1兆2000億元(約25兆円)で「世紀のプロジェクト」とも呼ばれている。

 一方で、この巨大事業は周辺国や環境保護団体から強い懸念の声が上がっている。ヤルンツァンポ川は、インドでは「ブラマプトラ川」、バングラデシュでは「ジャムナ川」と名を変えて流れ、南アジアと東南アジアの約20億人にとって重要な水源。インドとバングラデシュは、河川の流量や流路の変化が引き起こす農業・漁業・飲用水への影響を危惧している。

 建設予定地はチベット東部・林芝市のメド県で、落差約2000メートルの急流区間に五つの段階的な水力発電所を建設する。発電量は年間3000億キロワット時に達し、三峡ダムの3倍で3億人の年間電力需要を賄える。2030年代の運転開始を目指しており、中国政府は、脱炭素化目標とチベット地域の経済発展を同時に推進する国家的プロジェクトと位置づけている。

 また、チベットの氷河と湿地は「地球の第三極」とも呼ばれる世界有数の淡水供給源であり、この地域での開発が生態系に不可逆の影響を及ぼす可能性も指摘されている。環境NGOや、亡命チベット人環境研究者ロサン・ヤンツォ氏らは、チベット高原での開発が下流域の数百万人の生計に深刻な影響を与えると警告している。特にヤルンツァンポ川やメコン川に依存する漁民や農民は、気候や水量の変化によって生活基盤を失うリスクがあるという。

 中国政府は「下流に悪影響は与えない」と主張しており、外交的にも「沿岸国との意思疎通を保つ」としているが、プロジェクトに伴う移住人口や生態系への影響については詳細を明かしていない。過去の三峡ダム建設では100万人以上が移転を余儀なくされており、今回も同様の人口移動が発生する可能性がある。

 この巨大な水力開発は、エネルギー政策、経済政策、外交、環境保護のすべてに関わる重大な国家戦略上のプロジェクトであり、今後の中国と南アジア諸国の関係にも影響を及ぼす可能性がある。

◇出典

https://www.rfi.fr/cn/%E4%B8%AD%E5%9B%BD/20250723-%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%9C%A8%E8%A5%BF%E8%97%8F%E5%90%AF%E5%8A%A8%E5%A4%87%E5%8F%97%E4%BA%89%E8%AE%AE%E7%9A%84%E5%A4%A7%E5%9E%8B%E6%B0%B4%E7%94%B5%E9%A1%B9%E7%9B%AE%E5%BB%BA%E8%AE%BE

https://www.dw.com/zh/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%90%AF%E5%8A%A8%E5%85%A8%E7%90%83%E6%9C%80%E5%A4%A7%E6%B0%B4%E7%94%B5%E5%B7%A5%E7%A8%8B-%E5%8D%B0%E5%BA%A6%E5%AD%9F%E5%8A%A0%E6%8B%89%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E6%8B%85%E5%BF%A7/a-73357002
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