
中国は世界のアンチモン供給の約60%を占め、他国で採掘された鉱石も多くが中国で精製されている。現在の中国からのアンチモン輸出量は、前年同期比で3分の1に減少。価格は過去1年で4倍以上に急騰し、1トンあたり6万ドル(約872万円)を超えている。
米業界団体の「責任ある電池連合(Responsible Battery Coalition)」のクリステンセン事務局長、アンチモン不足を「国家非常事態」と表現。加盟の会員各社に、電池の調達難やコスト増など深刻な打撃を与えている。特に鉛蓄電池はガソリン車のエンジン始動や太陽光発電の蓄電、産業用の非常電源に用いられ、アンチモンはその合金材料として欠かせない。
調査会社のプロジェクト・ブルーによれば、世界の年間需要は23万~24万トンに達し、鉛蓄電池向けがその約3分の1を占める。電池性能を保つには年間1万トンの高純度アンチモンが必要とされ、回収材だけでは不足を補えない。中国国外にも資源はあるが、買い手は中国の巨大な太陽光産業とも競合するため、価格交渉力で劣るのが実情だ。
クリステンセン氏は、米国が国内での精製・回収能力を強化し、同盟国と戦略鉱物の供給網を再構築しなければ、同様の危機が繰り返されると警告した。西側諸国は、軍事と民生の両面で中国という地政学的ライバルに過度に依存しており、抜本的な対応が迫られている。
◇出典
https://www.cna.com.tw/news/acn/202506190199.aspx
https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/5078557