
フォンデアライエン氏は会見で「われわれは中国に対し、ロシアを停戦の席に着かせ、流血を終わらせるための影響力を行使するよう期待している」と表明。中ロ関係が欧中関係全体を左右する構造的要素になっていると強調した。また、欧州側は人権問題にも触れ、自由と民主主義を尊重する国際秩序を守る必要性を改めて訴えた。
これに対し、中国の習近平国家主席は人民大会堂で、欧州が直面する課題は中国に起因するものではないと反論。「中国と欧州は根本的な利害対立や地政学的衝突を抱えていない」と述べ、EUが中国製品に対する規制を強化していることに懸念を示した。また中国は国際社会の安定に向け対話と協力を強化する意向を表明し、気候変動対応での協力強化を呼びかけた。
一方で、貿易不均衡も依然として大きな課題となった。欧州側は中国の過剰生産と補助金による輸出がEU単一市場に圧力を与えていると指摘。フォンデアライエン氏は「協力が深まるにつれて不均衡も拡大しており、互恵関係の再構築が不可欠だ」と訴え、中国が対等な条件を示さなければEUが中国製品への市場開放度を縮小せざるを得ないと警告した。
双方は中国レアアース輸出に関する「アップグレード版供給メカニズム」を新設し、供給逼迫時には迅速に対応する枠組みで合意した。
今回の首脳会議は当初2日間の予定が1日に短縮され、事前の期待値は低かった。台湾の研究者は「中国製電気自動車の大量流入は欧州の基幹産業を直撃し、過剰生産によるダンピングも問題化している」と指摘。ベルギーの研究者も「緊張関係の中でも対話の枠組みを維持することが双方にとって重要だ」と述べた。
欧州は中ロ関係の行方を欧中関係全体の試金石と位置づけつつ、貿易不均衡の是正を並行課題とする姿勢を示した今回の会議は、対立と協調の双方を抱えた現状を象徴するものとなった。