
李前首相の追悼の活動には、厳しい統制が続いているが、前首相の故郷の安徽省では、当局の妨害を押し切って住民が弔意を示すなど、民間には根強い追悼の動きがある。 李克強氏は生前、習近平政権下で実権を奪われた総理と評され、2020年に「6億人の月収が1000元(約2万円)しかない」と述べて、習近平氏の貧困脱却のアピールに痛打を与えたほか、「屋台経済」を推進しようとして習近平側近に潰されるなど、民生に対する本音の発言が注目を集めた。
新型コロナウイルス禍の際、感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」の最中、李前首相は深センで「改革開放は止まらない」と明言。退任前には「人がやったことは天が見ている」とも語った。だが今回の人民日報の追悼文では、こうした李克強氏の「本音」は一切省かれている。 李克強氏は、党内抗争で「七上八下(67歳までなら昇進・続投可、68歳以上は引退)」の慣例にもかかわらず中央委員会からも外された。その急死を巡っては今も「不審死」説が消えない。党内闘争に敗れた末の死は1989年に急死した胡耀邦元総書記と重ねられ、心労によるストレス死説も指摘される。
ただ、胡耀邦・趙紫陽両総書記時代と違い、李克強氏の時代は言論の自由も改革の余地も狭まり、温家宝のように憲政や普遍的価値観を語ることすら難しかった。
人民日報の追悼文は最後に「李克強氏を追悼するとは習近平同志を核心とする党中央にさらに緊密に団結することだ」と結論づけた。追悼文の掲載は、結局は習近平氏への忠誠を誓わせる政治的儀式に過ぎないというのが、多くの観測筋の見方だ。
◇出典
https://www.rfi.fr/cn/%E4%B8%AD%E5%9B%BD/20250703-%E4%BA%BA%E6%B0%91%E6%97%A5%E6%8A%A5%E7%BA%AA%E5%BF%B5%E6%9D%8E%E5%85%8B%E5%BC%BA%E5%86%A5%E8%AF%9E%E5%8F%91%E5%87%BA%E4%BA%86%E4%BB%80%E4%B9%88%E4%BF%A1%E5%8F%B7