「中華民国の存在直視せよ」、国慶節で蔡総統が中国に呼び掛け

 英BBC放送中国語版によると、蔡英文総統は10日、台北市で行われた国慶節(建国記念日)を祝う式典で演説し「中華民国が存在する事実を直視するよう、中国大陸当局に呼び掛けたい」と述べました。

 

 5月の民主進歩党(民進党)政権発足後、初めての国慶節で、蔡総統の発言に注目が集まっていました。

 

 蔡総統は演説で、中台関係について「民主制度に対する台湾人の固い信念を中国大陸当局が直視することを望む」と述べた上、「約束と善意は変わらない、圧力に屈しない、過去のような対決の道を歩まない」とする「新しい4つの『ない』」を掲げました。

 

 台湾と中国本土が1992年、「1つの中国原則」に関し口頭で達成したとされる合意「92コンセンサス」については「1992年に両岸(中台)に双方が会談した歴史的事実は尊重する」とした上、中華民国の存在を事実として認めるよう中国側に求めました。中国に対する新しい意思表示として、台湾内外で議論を呼びそうです。

 

 蔡総統は、合意文書がないことなどを理由に、「92コンセンサス」が存在しないと主張していますが、中国側は存在を認めることが中台交流再開の前提としています。

 

 台湾師範大学の范世平教授はBBCに対し、中華民国を直視せよとの発言について「92コンセンサスの有無を論議するなら、先に中華民国が統治している事実を先に認めよということ。論議をするかしないかの決定権を、中国側に投げたに等しい」との見方を示しています。

 

 風伝媒によると、蔡総統の発言に対し、中国の対台湾政策を管轄する国務院台湾事務弁公室(国台弁)安峰山報道官は「92コンセンサスを認めるか否かは、台湾の指導者が言う『善意』を試す、試金石だ」と述べました。その上で「92コンセンサスの否定は、両岸の対立を煽り、経済、社会、文化のつながりを切断すもので、通り抜けることができない邪道だ」と語り、強く批判しています。

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