トランプ氏の対中政策、経済は圧力、安保は好機とリスク

 11月9日(日本時間)に投開票が行われた米大統領選で当選した、共和党のドナルド・トランプ次期大統領の対中政策について、米公共放送ボイス・オブ・アメリカ中国語版は10日、経済では貿易不均衡是正のため中国に圧力をかけるとの専門家の見方を伝えた。安全保障面でトランプ氏は孤立主義を採るため、中国には好機とリスクの両方をもたらすとみられる。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディ氏は「トランプ次期大統領は、中国に圧力をかけるだろうが、貿易不均衡の是正のためで、貿易戦争にはならない。公平な関係を構築し、米国が中国でさらに幅広く市場参入できるようにしたいと考えている」と述べた。

 ケネディ氏は中国の人権問題について「トランプ氏は関心がない。選挙中にも触れなかった」と述べた。次期大統領は1990年、米誌の取材に対し、中国政府が1989年、学生の民主化要求デモを武力鎮圧したことを賞賛している。

 ケネディ氏によるとトランプ次期大統領は力の崇拝者で、ロシアのプーチン大統領を讃えており、ロシアと緊密な関係を築くとみられる。

 トランプ氏は選挙中、海軍艦艇を現在の274隻から350隻に拡大することを公約しており、一部はアジア太平洋に配備されるとみられる。

 トランプ氏の安全保障分野の顧問、ピーター・ナバロ米カリフォルニア 大教授らは7日、中国の野心を抑え、アジア太平洋地区の安定を維持するため、米海軍が重要だとする論文を雑誌に発表している。

 米国企業研究所のマイケル・オースリン研究員は「トランプ次期大統領は、孤立主義を鮮明にしている。アジアの2つの同盟国である日本と韓国に、安全保障費用を出すよう求め、そうしなければ米軍と撤退させると述べた。冷戦以来の共和党のアジア安全保障の考え方に背くものだ」と指摘。その上で「中国はチャンスをつかめば、米国のアジア太平洋と世界での地位に挑戦することが可能だ」と述べた。

 オースリン研究員は「中国は、戦略的に我慢の策略を採るなら、米国のパートナーになれる。そうなればアジアの版図は根本的に変わる。ワシントンには、アジアと世界における米国の地位を心配する声もある」と付け加えた。

 ケネディ氏は「米国の同盟国は、さらに多くの防衛費を負担するだろう。同盟の解消は望んでいない」と語る。

 トランプ次期大統領の孤立主義は、長期的には中国のリスクになるとの見方も出ている。

 政治リスクコンサルティング会社、ユーラシアグループ社は9日、トランプ氏の孤立主義の受益者は、安倍晋三首相だと指摘。「米軍が撤退するなら、安倍首相は改憲を進める。軍備増強も説得力を持つだろう」と述べた。

 ケネディ氏も「アジア各国は自衛せざるを得ない。中国は平和的に発展する環境を失い、自国の安全への投資をさらに増やさざるをえない」とかたった。

 

(参考)http://www.voachinese.com/a/trump-china-20161109/3589820.html

 

タイトルとURLをコピーしました