米公共放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、中国で最近、企業の経営不振や倒産の増加により、賃金未払いをめぐる労使紛争が頻発している。賃金未払いの業界も不動産開発業からその他に拡大。専門家によれば、建設業と自動車製造業、一部の輸出企業が2024年の賃金未払いの多発業界となった。地方政府の資金不足から公共セクターでも賃金の遅配欠配が広がっており、治安や政治の安定性を危うくしている。(写真は星島日報のサイト)
重慶市の自動車部品工場勤務の男性によると、賃金未払いになっても助けを求める先がない。一部の労働者が集団で企業に抗議したり、国家労務局に告発したりしているが役に立たず、大きな流れにはならない。抗議を呼びかけた労働者は弾圧されるので、賃金未払いでも多くは沈黙しているという。
重慶市の労働者派遣会社は、経営者が逃げるケースもしばしば。賃金未払いは日常茶飯事で、派遣労働者の賃金ピンハネもしょっちゅう。しかし、派遣労働者は解雇と再就職の困難を恐れて、そのまま勤務を続けるという。
賃金未払いはホワイトカラー層にも及んでいる。広東省汕尾市では11月30日、公立病院の医療スタッフ数十人が病院のホールで賃金支払いを求める抗議活動を行った。航空会社の中国幸福航空では、操縦士の賃金が9カ月も支払われず、食事の出前サービスのアルバイトなどで収入を補っていることが12月1日報じられた。
豪モナシュ大学商学部の史鶴凌教授によれば、最近は中国の公共セクターでも賃金未払いが拡大している。中国のマクロ経済が低迷し地方政府の債務が拡大しているため。米ゴールドマン・サックスは23年8月、中国の地方政府の債務が94兆元(約1943兆円)に達するとの推計を公表した。
中国の各レベルの地方政府は、税金の追加徴収や罰金徴収の強化で、財政収入不足を補おうとしている。他地域に出向いて罰金徴収などを行うケースもある。
史教授は「末端の公共セクターは中国共産党の統治の基盤だ。病院や警察が資金不足となるなら、さらに多くの社会問題が発生し、中国共産党政権の安定性にも影響するだろう」と述べた。
◇出典
https://www.voachinese.com/a/china-wages-arrears-social-stability-real-estate-20241205/7888311.html
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